忍たま 長編
□おいしいご飯
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結局、学園長と話していたせいで、昼休み中に昼食を食べられなかった桃は、許可をもらって食堂へと向かっていた。
「あ、ここです」
『食堂』と書かれた看板のある戸を見つけ、そっと開けて中をのぞいてみた。
やはり今は授業中であるため、生徒は誰1人として来ていない。
「あら?どうしたの、そんな所で」
ふと声をかけられ“はっ”として顔を向けると、カウンターから1人の女性が顔をのぞかせてこちらを見ていた。
「あの、先生から許可をもらってお昼を食べに来たのです」
「あぁ!あなたが桃ちゃんね?土井先生から事情は聞いているわよ。さ、いらっしゃい」
“ニコリ”と笑って手招きをする女性を見て、桃はトコトコと小走りに中へ入った。
「はい!あいにく焼き魚定食しか残ってないんだけれど」
そう言って差し出されたお膳を見て、桃は“ぱぁっ”と顔を輝かせた。
「わぁっ!おいしそうですー!ありがとうございます」
「いいのよ!冷めないうちに食べてちょうだい」
「はいです!」
桃は嬉しそうにうなづくと、近くの席に腰をおろした。
そして、湯気のたつホカホカのお膳にむかって、そっと手を合わせた。
その時だった。
「あ、ちょっといいかしら?」
「?」
桃が横を向くと、さっきの女性がなぜかしゃもじを持って立っていた。
不思議そうに首をかしげると、突然女性は、そのしゃもじを高々とかかげた。
「お残しは許しまへんでぇぇぇえっ!?」
「っ!!……!?…」
恐ろしい顔で叫んだ女性を見上げて、桃は口をパクパクさせて固まってしまった。
女性はしゃもじを降ろすと、少し恥ずかしそうにしながら笑ってほほをかいた。
「ごめんなさいねぇ!これ言わないと、何だか落ち着かなくて…」
「い、いえ!大丈夫です!(び、びっくりしたですぅっ!!)」
「ふふふっ。じゃあ、ごゆっくりどうぞ」
そう言うと、女性はまた台所へと戻っていってしまった。
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