小説

□奪心
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何故だ!
何故なんだ

「ここに居た方が安全に決まってる!」

それなのに、何故わざわざ、危険な寺田屋を選ぶ。。。
それとも、ここが気に入らんというのか?!


未来の話も、もっと聞きたい。
あいつのあの何とも言えぬ、表情は面白い。

だが、何より、あいつの身を守るには、ここにいるのが絶対いい!

「よし…」

俺が立ち上がると、見計らったように、襖が開く。

「なんだ?小五郎?」
その襖を開けた主の顔は、見なくてもわかる。

「どこに行くんだい?」
顔は、笑っているが、こんな時の小五郎は、面倒だ。。。
「いや、別に」
と、ごまかした所で、こいつはお見通しだろう。

「彼女は、自分で自分の行く先を決めたのだから、私達には、決める権利はないよ。晋作!」

ほら。。。

「あいつの事を決める権利はないが、あいつを奪い返す権利はある!!」

我ながら、素晴らしい理屈だな(笑)

「晋作
「惚れた女を奪いに行く!それの何が悪い!!」

俺様の見つけた、宝を横取りされてたまるか。

「惚れたって彼女には、今日あったばかりじゃないか。。。」

少し戸惑った顔で、小五郎は言う。

「石頭の小五郎には、順序を守らないと、女に惚れる事もできないか!」

俺は、そう言い放ち、小五郎の横を擦り抜ける。
「晋作

決して手荒な真似はしないが、小五郎の声は突き刺さるような攻撃をしかけてくる。。。

「彼女は、寺田屋を選んだんだよ。いいかい?その時点で晋作は、彼女の心には、いないんじゃないのかい?」

ほらほら…
グッサリ突き刺してくれる。。。
「それなら、今から心に刻み込めばいい!」

俺が居ないなら、俺をとことん刻み込んでやる。

「まったく。。。彼女が本当に未来から来たなら、それを、彼女が望むと想うかい?」
「…うっ…」

それは……
そうだ。。。

「彼女が望むようにしてあげるのが、彼女の幸せではないのかい?」

あいつの望みは、やはり未来に帰る事なのか?…それが一番の幸せなのか。。。

「……」
「それでも、彼女を無理矢理つれてくる気かい?」

小五郎は、黙った俺に、さらに追い討ちをかける。

「……それでも。それでも、あいつを奪いたい時はどうしたらいい?」

「!

あいつの今も、あいつの過去も、あいつの未来も。
全て奪いたい時は。。。

「…どうやら奪われたのは、俺様らしい(笑)」

あの一瞬で、あいつは俺様の心を奪っていった。。。
「とにかく。今日の所は引こう。まだ、彼女は未来へ帰るわけではないのだからね」

そう、笑う小五郎。。。
そうか。
なるほど。

小五郎も、あいつが気になると言うわけか。
もっとも、俺様とは別の理由ではあるだろうが。。。


「…わかった」
「晋作にしては、聞き分けがいいね」

「…ははっ!つまらんくなったら、お前に女装でもさせて、踊りでも踊ってもらうからな(笑)」


「それは困ったな…」

大して困った顔もせず、そう言う小五郎を背に。

勢いづけた心を持て余してしまった俺は、とりあえず、あいつの変わりになるモノを探す事にした。。。



end

あとがきへ。。。


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