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□決戦前夜
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「近藤さん、頼むから総悟をあまり甘やかさないでくれ。他の隊士に示しがつかねえんだよ」

近藤さんの私室に酒を持って訪れた俺は、ついにたまらなくなって近藤さんに懇願してしまった。近藤さんが嫌がらないのをいいことに、総悟のスキンシップはどんどん過剰になってきている。もちろん総悟が単に近藤さんを「自分の大将」として慕っているだけではないことは明白だ。そんなのアイツの目の色を見ればわかる。あれは、恋心、なんて可愛らしいものでもねえ。はっきりした欲情の色だ。

今日の昼も、縁側で近藤さんの膝枕で寝転がりながら、その顎鬚をいじる総悟の目は妙に濡れていた。近藤さんはその総悟の危険な表情に一向に気づかないのか、猫でも可愛がるかのような穏やかな顔で、アイツの髪をかきまわしながら笑っていたのだ。ああイライラする。

「そうはいってもなあ。だってアイツ、まだ10代なんだぜ。大人として扱ってやんなきゃ拗ねる年頃だけど、甘えてきたときには受け止めてやんなきゃ可哀想だろう。とくにアイツみたいに片意地張って生きてる男はさ。もうミツバ殿もいねえんだし…」

最後は語尾を濁し、何かをこらえるようにうつむいてしまった近藤さんに、俺のイライラは最高潮に達した。

「ミツバを亡くしたってんなら、俺だって一緒だろ。なあ、俺にはなんもしてくれねえの?」

酔っていたのかもしれない。ずい、と近藤さんに近づき、下から顔を覗き込む。

「なんだ、お前も甘えたいのか。もうじき30にもなろうってのに仕方ない奴だな」

そう言って苦笑すると俺の頭を胸に抱えこんで、もう片方の手で背中をなでる。

「俺はずっと傍にいるぜ。安心しろよ。女じゃねえからお前にあったかい家庭を作ってやることはできねえ。けどよ、傍にいてお前が曲がっちまわねえように見ててやったり、お前の苦しさを知りながら、それを知らないふりして見守ってやることはしてやれるぜ」

近藤さん。俺の苦しみが何か、あんた知ってるのか。一瞬どきりとする。
…知ってるわけねえよな。冷静になった俺は、安堵して愛しい男の背中に腕を回す。

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