ポケスペ鬼倒回想録
□第三話 新たなる世界
1ページ/9ページ
深い森を抜けるころにはもう日が見え始めていた。
目的地は聞いたこともない山、『鬼羅』。
三国の境、境界線にある山で標高はものすごく高く、また、住処も高い所にあるらしい。
そこで暮らすほうが肺活量が上がって、いい修業になる。
黒鉄はそう言っていた。
それにしても……と黒鉄の顔を見上げる。
抱かれているから見上げる形になってしまうが……。
「(疲れないのかしら………。)」
もう三時も走っている。(六時間)
(じっー………)
我ながらもなんとも恥ずかしいことをした。
「な…なんだよ?顔になんか付いてるか?」
気づいた黒鉄は白夜から顔をそらした。
顔が紅くなっている。
「あ……」
見つめてたからだ。
ずっと、彼を。
急に恥ずかしさがこみ上げてきた。
「ごごご、ごめんなさい!!そんなつもりじゃなかったんです!!」
「分かったから暴れんな!」
黒鉄は白夜を地面に下ろした。
久々の地面が冷たく感じる。
城の廊下はある意味冷たかったけど。
「どうして私を盗んだの?」
「同じような仲間をほっとけなくて」
「それだけ?」
「こちとらそれだけじゃ済まないんでね」
黒鉄はようやく足を止めて近くの石に座った。