ポケスペ鬼倒回想録

□第二十七話 裏の裏のそのまた裏
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宮の出入りは簡単に終わった。

けれど油断はできない。

どこに兵が隠れているか分からないからだ。

囲まれたらじぶんたちなんて一溜まりもない
だろう。

「なぁ……どうすっか?」

『何をですか?』

「どういう顔して会えばいいんだよって」

『笑顔はどうですか?』

「笑えねぇよ」

『じゃあ真顔?』

「かえってやりずれぇ」

『普通は?』

「一番危ない気がする」

ゴールドはここに来ると怖がりな子供みたい
になってしまう。

そんなにも嫌な思い出があるのだろうか。

ふと、そんなことを考えていると月宮につい
た。

あたりに人は誰もいない。

夜の静けさか、嵐の前触れか、気味の悪い位
に静かである。

日が暮れ始めているまだ夕方に、城で人がい
ないなんざ聞いたことがない。

こんな無防備でいいのか。

三国が争っていると言う自覚が本当にあるの
か。

『失礼しま〜す………』

伸び縮む声でホワイトはドアを開けた。

中は真っ暗だった。

一瞬ヒヤッとしたが、冷たい風が中から外へ
と吹いている。

なんだろうこの感じと、ホワイトは両腕を抱
いた。

誰もいない、松明も燃えていない。

ギギーィ…………バタン

ひとりでにドアが勝手に閉まる。

ここで待っていろと言う事なのか。

『にしても静かねぇ〜』

「白夜!罠だ、逃げろ!!」

ゴールドの血相の変わった声を聞いてホワイ
トは首をかしげた。

『え……?』

ゴールドを見るために瞬間的に振り替える
と、背中に気配を感じそのまま硬直した。

おそるおそる首を動かす。

「駄目ですよ、入る時は挨拶の一つでもしな
ければ」

『りゅ、龍詠!』

「あら、覚えていて下さったとは光栄です
ね、義賊戦士」

龍詠は相変わらずの笑顔で軽く挨拶をする。

それが逆に怖い。

『な…なんですか……?』

「俺達にご用があったんでしょ?そのお話を
しに来ました」

ホワイトの耳にそっと呟きかけた。

「俺の部屋でね」

『ちょ!』

龍詠は軽々とホワイトの体を持ち上げた。

肩に担がれて身動きが取れないまま奥へと連
れてかれる。

『離して!!』

「嫌ですよ〜」

パチン

龍詠の指鳴らしで次々に兵がゴールドをかこ
った。

この暗さは兵を隠すためか!と、心で舌打ち
をする。

なぜ現主上は出てこないの!?なんで!心の中
で何度も叫んだ。

『金龍さんに危害を加えるつもり!?ちゃんと
話し合えばわかるわ。だから、解放して!』

「これも現主上のお考えなんだよ。分かるか
い?現主上が主上を連れて来いとおっしゃっ
た」

『現……主上ですって………』

この前愛しいとまでいっていたあの母親が、
我が子を殺そうとしているのかと思うと、ホ
ワイトの堪忍袋の緒が一気に数十個ぐらいは
ちきれた気がした。

なぜそこまでゴールドを殺そうとするのか。

もしかしたら違うのかもしれない。

殺す気はなく、ただ我が子として主上として
家族の一員に戻ってきてほしいのかもしれな
い。

どっちを信じていいのか分からず、ホワイト
は頭を押さえた。

「現主上は主上を必要としている、だから戻
ってきてもらいますよ」

「…………なら、白夜の無事を約束しろ」

ゴールドは龍詠を睨みつけた。

「こいつは俺が長から預かった大切な後輩
だ。先人は何があっても後輩を守らなきゃな
らねぇ。たとえ、自分が傷ついてもだ」

「それはお約束で?」

「俺よりこいつの方がいい未来を生きる。長
も承知の上ってところだな」

「長?」

「誰かは教えねぇよ」

長はレッドのことを示す。

そのことぐらいホワイトにも分かる。

だから、あんなにもせっぱつまって討論して
いたのか。

自分を助けるために、約束まで結んで。

「長に約束させた。交渉に失敗しても救助に
は来させんなってな。俺一人の命の為に、皆
の命を危険にさらすのはぜってぇ許せない。
長も納得してくれた」

『そんな………』

「だから、俺にはお前を無事に帰す責任があ
る」

『ですけど、金龍さんを置いていけるはずが
ないでしょう!?』

「無理だ」

『なんでそんなことを言うんですか!この世
界にはあなたに憧れている子供たちや、皆が
いるんです!私、書物を見てずっと思ってい
たんですよ………。義賊金龍みたいになりた
いって、ずっと……ず〜っと思っていまし
た。だから、憧れる先輩が目の前で朽ちるな
んて見たくありません!この前だって、私達
が単独行動しただけで赤陽さん、ものすごく
怒っていたじゃありませんか!!』

「白夜……」

『金龍さんを待っている人がたくさん存在す
ることを理解してください!おかえりの一言
を言うためにずっと待ってる人だっているん
です!だから………責任とか義務だとか、そ
んなこと言わないで、二人で帰りましょう。
私達のい……』

龍詠の拳がホワイトの鳩尾にめり込んだ。

『が……はっ………』

意識が遠のいていく。

「白夜……ッ!」

ゴールドの声が遠くに聞こえた。

「白夜ぁぁぁあああああああ!!」


























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