ポケスペ鬼倒回想録

□第二十七話 裏の裏のそのまた裏
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その頃ブラック達北通路側は、クリスが加わ
り、一段とにぎやかさを増していた。

「神威組長は異血組が解散したとしたら、ど
うするおつもりですか?」

「う〜ん、鬼狩りをやっぱり続けようか
な?」

クリス達はたわいもないおしゃべりをしてい
た。

楽しそうだがブラックは加わる気にはなれな
かった。

レッドにくっついている神威が気に食わなか
った、という点もあるが、ホワイトにまで手
を伸ばそうとした最悪な人だからである。

個人的にうなっているだけだから戦いには支
障は出すつもりはないが、イライラして人を
殺しかねない。

ブラックは目の前を通り過ぎた猫の尻尾を踏
んだ。

『ふぎゃあ!』

「…………」

猫は威嚇したままどこかへ消えた。

そんなこともうどうでもいい。

ブラックの心はもう空気中を漂っていた。

神威に全てを取られそうな気がしてならなか
った。

相棒や尊敬する師(レッド)を失うのはブラ
ックも我慢がならない。

「ブラック?」

「ん、なんですか」

いつのまにか神威の手が肩に置かれていた。

ずっと呼んでいたとしたら迷惑をかけてしま
ったことになる。

急いで謝った。

「呼んでました?すみません、気がつきませ
んでした」

「謝るなヨ、こっちおいで」

「なぜ?」

「お話しよう」

「話すことがないんですけど」

「夜兎組の仲間呼んできてもいいんだよ♪」

そうだった、組にはここに召集されてる人以
外にも手下たちがいるのか。

色随想組はここにいる人しかいないが、他の
組はものすごい量がいるって確かレッドが言
っていた。

自分の身の為にしぶしぶ立ち上がって輪の中
に混ざった。

「ブラックはレッドとどこで出会ったんだ
い。やっぱり皆それぞれ出会いってものがあ
るだろう?」

「そう言えばブラック君の話を聞いたことが
ないですよね」

「いつも逃げちゃうし……」

皆の視線がブラックに集まる。

興味という瞳がブラックの秘密の境界線をこ
じ開けていく。

しかし、ブラックはそれを無理やり閉めた。

「残念ながら記憶にないです。失神してたん
で」

「なんだ、残念だネ」

「本当残念ですね」

ため息がブラックの居心地を悪くする。

嘘をついてしまった。

覚えてない訳がない。

これはレッドと自分の大切な約束。

レッドは自分に………

「レッドさんは俺に?」

「だーかーら、人の心を読むのを止めてって
言ってるじゃないですか(怒)」

神威の前での考え事は止めた方がいい。

ろくなことにならない。

もしかしたら、打ち明けた瞬間このひとに殺
されかねないから。

ゾクッ

「!」

今一瞬寒気がブラックを襲った。

背筋が震え、冷や汗が頬を伝い、背中をずっ
しりと重いものがのしかかったような、気持
ちの悪い感覚だった。

その時、ふと悪い予感が脳裏によぎる。

自分の危険信号が赤に変わる。

行かなければいけない、自分を待っている人
がいる。

「ちょ、ブラック君!?どこへ行くの!」

クリスの叫びも耳には届かず、ブラックは槍
をもって駈け出した。

























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