ポケスペ鬼倒回想録

□第二十六話 鍵となった少女
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鬼羅山は道以外を通らないと出れない自然の
迷路となっている。
ということは容易に不意打ちや待ち伏せはで
きない。

真っ向勝負一本となる。

自分の力が通じるか不安だが黒陽もいるし大
丈夫だろう。

敵に着くと怖いが味方に付くととても頼もし
い神威組長や、相棒のブラック君、そして半
鬼のイエローさんがいれば楽勝だ。

「ここだね」

神威が足を止め近くの岩に座った。

ここが待ち伏せ地点。

随分鬼羅山から遠いがだいじょうぶなのだろ
うか。

私も岩に座った。

幸い川も流れている。

夏だから凍えることもない。

それだけでも救いだった。

「緊張するかい?なんせ無理宣言されちゃっ
たもんね(笑)」

けらけらと笑う神威組長がうらやましかっ
た。

『はい……少し緊張しています……』

「俺はね、中国ってところから強いやつを追
い求めてやってきた。妹も阿武兎もつれて
ね。端から端まで戦い尽くしたよ。けど俺た
ちに勝てる者はだれ一人いなかった。とある
春、桜の木の下でレッドと出会ったんだ」

『レッドさんと?』

「レッドの手には鎌が握られていた。丁度い
いと思って戦ってもらったんだよね」

「どうだったんですか?」

ブラックが興味シンシンできくと、イエロー
がぼそっと呟いた。

「完敗だったんですよね確か」

「『えッ!?』」

この神威さんが完敗!?

「まったく………せっかく私が一生懸命逃が
したって言うのになんで山で遊んでるんです
か、もう………」

じゃあ、イエローさんが山に逃がした際戦っ
たというのか。(気になる人は黄羅回想録へ
ゴー!!)

「手も足も出なかった。全部見切られて挙句
の果てに命を助けてもらっちゃったよ。アハ
ハハハハ」

『で、そのあとレッドさんは?』

「確か勢いよく山を下りて行ったよ」

『そしてどうして神威さんがここに?』

「魅いっちゃったのさ。レッドに。」

『魅入った?』

「レッドの後ろに付いてきたいと思ったんだ
よ。背中を守りたいってね。俺は……初めて
人間に興味を持った…………」

またケタケタと笑う。

「俺もその部類に入るかな………」

『え、何か言った?』

「ううん、なんでもない」

ブラックの呟きが聞こえなかったが、神威さ
んの過去なんかおもしろい。

皆色々な過去を持っていて色々な未来に歩い
て行くんだ。

そう思うと胸がはずんだ。

「レッドは人を引き付ける力がある。レッド
の心の揺さぶりは歴史さえ変えてしまう威力
を持つんだよ」

『歴史を……変える威力……』

不思議な人だ、レッドさんって。

「他に聞きたいことはあるかい?」

『その包帯……怪我でもなされてるんです
か?』

「あぁこれ?夜兎族は日光を浴びると干から
びて死んじゃうんだヨ?」

『日光に浴びただけで!?』

「夜兎は夜の兎ってかくだろ?夜に活動する
生き物だからさ。」

『………………!!!!』

「なんだいそのキラキラした目は。いっとく
けど俺絶対に日には当たらないからね。絶対
干からびて死ぬとかしないからね」

『………………はぁ………』

「ため息作られてもやらないよ」

その様子を見ていたブラックはひそかにため
息をついた………つもりだった。

「何ため息ついてるんですか?」

「イエローさん、人間観察ですか?」

「はい、もしかして………神威組長にヤキモ
チですか?」

「焼餅の間違いじゃなくて?」

「違います!嫉妬のほうですよ!どこまで神
威組長嫌いなんですか!」

嫌い?俺は立ち上がった。

「なんか……神威組長と話してるホワイトが
やたら楽しそうに見えてならないんです。あ
の笑顔、他の人には見せたくないなって。さ
っき組に勧誘したじゃないですか?とられた
気がしてならないんです。負けた気がしてな
らないんですよ!」

「ブラックさん……」

人一倍負けず嫌いのブラックが普段発するこ
とのない本音。

「大丈夫です。私が保証しますから」

「あなたの大丈夫は大丈夫に聞こえない」

「酷いですブラックさん!!」

イエローが泣きわめいたので軽く頭をなで
た。

年下みたい………けど年上なんだよね……。

慰めつつも神威を睨みつけた。

絶対ホワイトを渡さない。

あの野獣一派に入れてたまるか。

「アハハハハ、凄いにらみを利かせてどうし
たんだい?もしかしてブラック、俺に勝てる
と思ってるのかい?」

「!?」

バ……バレてる!?

なんだこの洞察力は!!

「勝てますよ、腕ではなく顔で」

「おっ、凄い自信だね。自信満々の子好きな
んだ♪でもね、自信じゃ勝てないこともある
んだよ」

ホワイトを挟んで火花を散らした。

『二人ともやめてください!!このとき敵が来
たら………』

ガサゴソガサゴソ

『ひぃッ!!どうするんですかぁ!!(泣)』

「…………目が見えないよー………」

「ホワイト、降りて………」

『あ………』

急いで二人の頭から飛び降りた。

『ごめんなさい』

「いや別にいいんだけどね」

「さっきの音………」

草むらのかき分ける音だった。

敵?

もしかして………もう敵が来たの?

「ホワイトさーん!!」

この声はクリスさん!?

『ど……どうしたんですか?』

草をたくさん身につけて……。

「グリーンさんが呼んでいます」

草なだけに?

『でも持ち場を離れる訳には………』

「私が代わりにいることになりました」

なら大丈夫か。

『もし神威組長とブラック君が喧嘩しそうに
なったらおこるなり魔術かけるなりしてくだ
さいね』

「分かりました。では転送します」

私の姿は一瞬のうちに消えた。

そして次瞳の中に入ってきたのは鬼羅堂内
部。

それも床にはいかにもべっとりしてそうな赤
い線の魔方陣。

そしてそのなかに立つゴールドと見守ってい
るグリーンがいた。

儀式?

生贄?

私ここで死ぬの?

「来たか、早く中は入れよ」

『は……はい』

線を踏まないように中に恐る恐る入った。

「じゃあな、無事を祈る」

「分かってますよ。行くぞホワイト」

はい、友に上でも下でもどこにでも行きまし
ょうゴールドさん。

陣が光りだす。

そして私は意識が吹き飛んだ。





















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