ポケスペ鬼倒回想録

□第二十六話 鍵となった少女
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「サファイアですって………?」

ルビーの眉間にしわが寄った。

「もともとこの山は俺達が来る前に帥虎とい
う神獣がいてこの山に捨てられていたサファ
イアと山を支配していた。この穴倉も実際に
帥虎が使っていたものだ。この山にはたくさ
んの動物が集い、難病のための耐性薬もあ
り、人間にしては宝の山同然だった。人間達
は我先にと山に押し寄せた。しかし帥虎の放
つ陰陽結界に阻まれた。そこでやってきたの
が陰陽の敵である魔術師。簡単にいえば西洋
魔術が魔術、東洋魔術が陰陽というところ
だ。あの頃の陰陽は魔術に弱かった。いまは
確か大丈夫だよな?」

「えぇ」

クリスが頷く。

「結界を破られた帥虎は魔術師によって殺さ
れた。サファイアも痛めつけられた。しかし
サファイアは全員追い返した。そして山にこ
もるように心の結界を張ってこもってしまっ
たんだ」

『心の……結界……』

「心の結界は自分の心を堅く閉ざす代わりに
魔術をも打ち破る強力な結界のことを言う。
それ以来山にはだれも近づかなくなった。そ
こに俺達色随想組が下見に行った。新しい基
地になるところを探し求めて。」

『ブラック君も?』

「いや、俺はまだこのころは入ってないよ。
あと三ヶ月後ぐらいかな?」

「結界の存在を知った俺達はそこでしばらく
潜伏していた。そして見てしまったんだ」

「村の人が火を放つところを………
ね………」

ブルーがため息とともに言葉を吐き出した。

「俺たちは気づかなかった。唯一気づいたの
はルビーただ一人だった」

「あのときのルビーさんはカッコよかったで
すよね」

「やめてくださいよクリスさん、結構恥ずか
しいんですから……」

「俺も遠目で見てたよ。あのときの活躍はよ
かったと思うな」

「神威組長まで………」

「ルビーが火事で倒れていたサファイアを救
助してくれたんだよ」

『へぇ………で、なぜサファイアさんを皆欲
しがってるんですか?』

「つまり、山の所有権はサファイアが持って
いる。三国はこの山を手に入れるため
に……………サファイアを殺す気
だ…………」

『そんなっ………!!』

山のために人を殺す……。

人間の考えることはやっぱりおかしい。

たった……この普通の山のために…………。

「ふざけやがって……ッ!!」

「何考えてるアルか人間ども!!私達が滅ぼし
てやるネ!!リンチネ!!ミンチネ!!挽肉ネ!!」

「絶対同じ人間って考えたくないわね」

「ハマナさんに同感だよ俺も」

怒りがあったって勝てる勝てないとかいう問
題じゃない。

絶対に勝ち目はないわ今回。

レッドさんは勝ち目のない勝負はしない。

さっき言った通り皆の命最優先だから。

守るって言って戦ったって絶対皆殺された暁
にサファイアも殺される。

【大丈夫よ】

何突拍子もないこと言っちゃってんですか黒
陽さん。

だれかこの馬鹿を止めてぇー!!

という願いもむなしく影からまた出てくる。

『勝機がある勝負ならやってくれるんでし
ょ?』

「……あるのか?」

レッドが息をのんだ。

『えぇ、私の指示通り動けばね』

黒陽は得体も知れない名前のつけようのない
笑みを浮かべた。

そして説明を始めた。
























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