ポケスペ鬼倒回想録

□第二十六話 鍵となった少女
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「ちょ…勝手に出てこないでよ!!本当に面倒
なことになるから!!」

しかし黒陽は影から出てくるなりレッドにガ
ンつけた。

『聞いていて聞き苦しいわ。一つ言うけどあ
んた暴走しすぎ』

「黒陽………」

レッドがゴールドからゆっくりと手を離し
た。

「阿伏兎誰だい、アレ?」

「新人の能力だってよ。自分の裏を引き出す
ことができるらしい。おかげで嬢ちゃん無敵
だ」

「へぇ……」

面白そうだ。

神威にたくらみの笑顔が咲いた。

『レッド、あんたのほうが嘘つきよ。なんで
全部背負いこもうとしてるの?私達を信じら
れない?自分の命令一つで命が果てるのが怖
い?』

「黒陽……何を言っ『嘘ツキ嘘ツキ嘘ツキ嘘
ツキ嘘ツキ嘘ツキ嘘ツキ』

黒陽の嘘ツキという言葉はやむことを知らな
い。

ずっとレッドの顔を見続けただその言葉を永
遠に繰り返し続けた。

誰も口出しはできない。

プラチナもミツルもあっけにとられて手すら
も動かすことができなかった。

やっとやんだと思えば今度は説教。

『仲間は何のためにあるの?形だけ?それは
仲間じゃない、ただの人間の集まりよ。ここ
にいるのは皆レッドにあこがれてついてきた
仲間でしょ?もっと堂々と仲間を頼りなさい
な。命令の一つや二つもできないのヘタレッ
ド』

全てを言いだすと今度は口をつぐんだ。

結構黒陽って自分勝手?

レッドの真下の床が何かで濡れる。

皆はアッと息をのんだ。

レッドさんが………泣いてる……。

レッドの頬に大粒の涙がこぼれおちた。

『レッド、あんなただけじゃない。銀髪のあ
んたも緑髪のあんたも知ってるでしょ。口を
つぐんでないで何か言ってみなさい』

「とんだ名探偵が身近にいたもんだ
な………」

「知れば知るほど失うものもある。それを知
ったほうがいいぜ嬢ちゃん。世の中には知ら
なくていい事もあるんだ」

マサさんの笑顔は神威組長並みに冷たかっ
た。

まるで自分がマサさんとやりあってるみたい
だ。

背筋がゾクッとした。

『私にそれ以上物事を言うなと?』

「あぁ、分かる奴でよかったわ。引け、この
件はお前じゃどうにもできねェよ。とくに影
ってところで何もできねェじゃねェか」

『私は実体化もできる。それにここの中で一
番強い』

「何言ってんだよ。ここにはレオだって「へ
ぇ…大した自信だね」

神威が入り込んできた。

「俺は強いやつは好きだ。何よりも好きだ。
そして、そいつと殺りあうのもすきだよ」

黒陽はニタッと笑顔を浮かべる。

『やりますか?殺りあいを』

「うれしいな。強い人と巡り合えて」

神威は阿伏兎のと目を振り切り立ち上がっ
た。

さっきのグリーンの言葉が脳裏によみがえる

(あいつらを敵に回すとたかが一分でこっちは皆殺しだからな)

黒陽が死んだら私どうなっちゃうのよ!!

巻き添い食らって死にたくないからね!!

「組長!!ガフッ!!」

阿伏兎の頭に神威の鉄拳がめり込む。

すると阿伏兎は地中深く埋まってしまった。

「邪魔すると殺しちゃうゾ」

「組長!」

「兄貴ほどほどにしろヨ。やるのはいいけ
ど」

「そのぐらい分かってる」

いや、分かってない。

睨みあうならぬ笑い合う二人。

本当どうなっちゃうんだ………。

「二人共そこまでだ………」

レッドが二人の手を握り締めた。

神威はレッドの瞳をじっと見つめると満足そ
うに自分の席に戻って行った。

黒陽も手を振り払った。

『ちゃんと話せる?』

「仲間を頼る大切さ、仲間の必要性、思い出
させてくれてありがとう。黒陽、お前にはい
ろいろと世話になった」

『分かってくれたならいいわ。ちゃんと皆に
真実を教えるのよ。人は理想じゃ生きてけな
い。真実と向き合っていかなきゃいけない
の』

「分かってる。ホワイトが困ってるから戻っ
てあげて」

黒陽の瞳がこっちを向いた。

【……しょうがない子だね】

どっちがしょうがない子なんでしょうね。

いつか体乗っ取られそうなんですけど。

いつか存在自体が裏返りそうなんですけど。

裏っていろいろな意味で怖い。

黒陽は霧になり影に戻って行った。

立場どっちが上か後でわからせてあげない
と……。

でしゃばりすぎちゃったわ。

「ホワイト、お前が気にすることはない」

『グリーンさん本当にすみません………うち
の黒陽が………』

「大丈夫大丈夫、グリーンさんだって気にす
るなって言ってるんだから」

「本当だよホワイト。ホワイトは笑顔が一番
似合うからさ」

『ブラック君、ルビーさん………』

皆がほほ笑みかけてくれた。

神威組長も神楽さんも、プラチナ組長もエメ
ラルドさんも。

皆笑いかけてくれた。

あとは……………レッドさんが打ちあけてく
れるのを待つだけ。

「俺も本当は隠し事はしたくなかっ
た………。でも皆は仲間を大切にしている仲
間思いの人間だ。絶対………守るために戦う
に決まってる…………。奴らがほしいのは鬼
羅山なんかじゃない…………。心して聞いて
くれ。奴らがほしいのは…………………サフ
ァイアだ………」



























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