上琴小説

□バレンタインデー
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〈2〉

美「ハァ…」
吐き出した息が白い。
外は天気は良かったが寒かった。
美琴は1人でぶらぶらと冬の街を歩き出す。
美「バレンタインデーか」歩きながらそんな言葉をもらす。
バレンタインデー。
以前それは適当に友達にチョコを渡す程度のものだったが、今の美琴は違っていた。
どう違うのかというと、バレンタインデーという言葉からある人物を思い浮かべてしまうのだ。
美「あいつ…もらってくれるかな」
上「独り言か?」
美「へ?」

美琴は聞き覚えのある声に立ち止まった。

何故か知らないがムカつく声だ。
美「な!何でアンタがここにいんのよ!!」
考えていたらその人が現れるなんて都合のいいドラマみたいだ。
上「たまたま通りかかったからだろ?…何で怒ってんだよ」
美「別に…怒ってないわよ…」
上条は“早く帰りたいオーラ”を全開に美琴の前を通り過ぎた。

美「…どこ行くの?」
上「どこって…寒いから帰る…。こんな日は家でごろごろだよなぁ…」
寒いのか具合が悪いのかわからない弱々しい口調で告げる上条。
美「ちょっと!待ちなさいよ」
美琴は上条を追いかけた。美「こんなに寒がってる女の子置いて帰るつもり?せめて一緒に帰ってやろうとか思わないのかしらっ!?」上「あったかそうなマフラーしておいてよく言うぜ」子供のような言い合いが続いく。
美琴の意地っ張りは次第にエスカレートしていった。
美「という訳で、途中までなら一緒に帰ってあげてもいいわよ」
上「…はぁ…不幸だ」
美「ど・う・い・う・意味〜?」

バチッ

直後、青白い電撃…。
上「嘘です嘘です!上条さんは御坂さんと一緒に帰ることができて非常に嬉しいです!」
美「いいわよアンタ何か」上「お、おいちょっと待てって」
今度は上条が美琴を追いかけた。





美「はぁ…」
美琴は寮に戻っていた。
帰宅するや否やベッドにダイブした。
あの後、結局上条と一緒に帰ってさんざん強がっていたため疲れてしまったのだろう。
世間はこれを“ツンデレ”と言ったりもする…。
黒「どうしたんですの?」黒子がベッドに潜り込んでいる美琴に話しかける。
美「何でもないわよ…」
美琴は寝起きのような声で返した。
黒「何でもないわけありませんわ。帰って来てはベッドに潜り、急に店を飛び出して…季節に関係なく短パンを履き…」
美「短パンは関係ないでしょうが!」
黒「ですが本当に少し変ですの…。寒いですし風邪でもひかれましたか?」
黒子は本気で美琴を心配していた。
この辺の性格は良いと素直に思う。
美「大丈夫よ、そんなんじゃないわ」







(何であいつの前だと調子狂うのかなぁ…)





美琴は心の中で呟いた。
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