上琴小説
□Stay With You
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〈1〉
集合は午前11時。
「遅かったじゃない!」と「悪い…」が交差してから数時間が経っていた。
そして…。
美「よし!次行くわよ」
上「はいはい…」
穏やかな昼下がり。
春のようなポカポカ陽気の中、2人はデートの真っ最中だった。
彼氏と彼女の関係になったのはつい最近のことだが、お互いの行動パターンがわかっているかのようにスムーズなデートである。
上「にしても毎回デパート行ってるような気がするんだが…。買い物ってそんなに楽しいもんなのか?」
美「アンタにはわかんないでしょうね」
会話は相変わらずたじたじな部分が目立つ。
目的地も相変わらずだ。
傾向としては美琴が上条を引っ張ってる感が強いように思われる。
上「上条さんにとっては、買い物は戦場だからな」
そんな彼は浮かない様子で「お嬢様にはわかるまい」と付け加える。
男子高校生にしては珍しく家庭的な一面をもっているのがチェックポイントだ。美「その様子じゃ、あの時のことまだ気にしてる訳?しつこいわね」
と、ここで美琴はとある日の出来事についての話を投げかける。
貴重なタンパク源がつぶれてしまったあれだ…。
上「なっ!特売品を手に入れられるかどうかは死活問題なんだと何度繰り返しらたわかる!?」
そんなことを言っても華麗にスルーされるのはわかっている。
上条は諦めかけてただ足を進めた。
が、その時だった。
上「…?」
美琴からはスルーされる予定だった。
そこまではいい。
しかし、あまりにも無反応だった。
上「おい、御坂」
美「…」
話しかけても応答がない。その上、数秒前とはうって変わって氷のような目をしていた。
そして、直後に美琴は地面に倒れ込んだ。
上「御坂!!」
状況が一変した。
上条は道の上に倒れた美琴に必死に喋りかける。
日射病かと心配したが、気候や気温から判断してその確率は極めて低い。
何度声をかけても依然として返事はなかった。
さらに。
バタッと。
人の倒れたる音がした。
上「(何だ…?)」
1人ではない。往来を行き来する人が“次々と倒れていった”。
上「(何が起こってる…)」
その時。
「安心しろ。眠らせただけだ」
どこかから声がした。
威圧感のある男の声。
上「誰だ!?」
「名乗るほどの者ではないが、ラヴェル=アレクスと答えておこう」
途端、ラヴェルと名乗る人物が前方から姿を現す。
上条は一瞬驚いたものの、すぐに相手を睨んだ。
上「テメェ…何者だ」
ラ「ふむ」
身長はおそらく190センチほど。髪は銀色で目は水色に近い。服には氷のような輝きを放つ小さな宝石が埋め込まれていた。
ラ「何者かと問われれば、魔術師だと答えるしかあるまい」
上「…何だって!?」
上条は驚愕した。
この男がはったりをかましているとは決して考えにくい。
一度に道行く人を全員眠らせる程の力。
正真正銘の魔術師と考えるしかなかった。