上琴小説

□Christmas Night
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〈1〉

御坂美琴は冬の街中を歩いていた。
衣替えした制服を着込んで首にマフラーを巻き、寒さ対策も完璧だ。

しかし、現在隣にいる上条当麻への対策が万全ではなかった…。

上「なぁ、これデートなんだよな?」
美「そ、そうよ!」
というのは2人は今、クリスマスデートの真っ最中である。
時間は午後2時くらいだ。クリスマスである今日は街中のどこを見渡してもカップルが多かった。
そんなラブラブオーラを放つカップルを見ながら上条は言う。
上「それなら…もうちょっとデートっぽくならねえのか?」
上条がさっきから言っているのは、何故か2人の間にある人間1人分のスペースのこと。
明らかに不自然である。
美「べ、別にいいじゃない…」
そして、美琴はずっとこんな調子だった。
それを上条は茶化してみる。
上「は〜ん…お前、緊張してんのか」
美「してないわよ!」
美琴は大嘘をついた。
実を言うとクリスマスデートという未知の体験に非常に緊張しているのだ。
1人分のスペースの正体はそれである。
上「つっても、これはどう見てもデートには見えねえぞ。何か、俺が嫌われてるようにしか見えないんだけど…」
この状態がかれこれ待ち合わせをした時間帯からずっと続いていた…。
美「何よ。じゃあ周りにいるカップルみたいに手でもつなごうって言いたい訳?まさかアンタがそんなことを…ぉぉォォ!?」

そして、語尾が素晴らしく変になったのには理由がある。

上条の右手が美琴の左手を握っていたからだ。

上「最初っからそう言えばいいだろ」

美琴は顔を真っ赤にした。美「なっ!ちょっと!いきなり何すんの!?」
上「いや、少しはデートっぽくなるかな〜なんて…」上条の乙女心お構いなしな行動に、美琴は電撃を発し…そうになったができなかった。
それは幻想殺しによってあっさりと封じられてしまっている。
上「右手のおかげで電撃も飛んで来ねえし、ちょうどいいよな」
勝ち誇った顔で上条は謳う。
手を握られたままではろくに演算もできないため、美琴は抵抗を諦めたようだ。
美「…じゃあいいわよ。アンタがどうしてもっていうなら、このままで」

上「ん?嫌なら別に手離しても――」

美「嫌なんて言ってないじゃない!全然言ってないわよ!」

ムキになってしまった。
乙女心をさらけ出してしまった。
上条の思うツボにはまってしまった…。
美「あ…」
上条は妙な笑顔で、
上「や〜っぱり、手つなぎたいんじゃねえか」
美「…」
すっかり黙り込んでしまう美琴。
レベル5の面影はどこにも見当たらず、普通の女子中学生モードに切り替わっていた。
上「冗談だって。俺だってこのままの方が良いに決まってんだろ」
美「…バカ」

何だかんだで、年に一度切りのクリスマスデートが始まる。

握った手から伝わる温度の心地よさを感じながら、2人は冬の学園都市を歩き続けた。
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