勿忘草の心3

□6.無知
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ねぇ、亮斗くん。
私、どうすればいいの?

「抱かせろ」

ザンザスさんは、そう言った。
「恋人、じゃねぇとできねーと聞いた。本当に欲しい女を抱いたらどんな気分になるのか…………七花、てめーがてめーで、オレに教えろ」

ツナくんの言葉を、思い出した。

『お試し期間って言っても、関係の名前が“恋人”になる以上、こういうことをしたい人は必ず出てきます。先輩が子供だと思ってOKした相手が、ほんとはもう子供じゃないってこと…………ちゃんとわかっておいてくださいね』

ザンザスさんは子供なんかじゃない。私はわかっていた。
でも、大人が相手だということをわかっていなかった。
関係が恋人同士なら、体を重ねることに何の不自然もない。
頭ではそう理解している。でも、心が追いつかない。

「……抱かせろ、七花」

私は手足の先が冷えていくのを感じながら、立ち尽くすしかなかった。


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