きみだけに捧げる狂想曲

□ムシケラ
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気付けば答えていた。
「……ヒバード」
「ヒバードちゃん!!」
なんでそんなうれしそうな顔で、ヒバードと戯れてんの?
なんでその笑顔が、僕の鼓動に影響するの?
「あの、よかったらまたヒバードちゃんに会いにきていいですか?」
最初に会った時とはうってかわった、和やかな雰囲気が流れる。
こんな生温い雰囲気、本来僕は好きじゃない。
でもなんでかな。
君といる時は、不快に感じない。どこか安らぎさえ感じるんだ。
「……君ならいつでも応接室に来ていいよ。他の風紀委員にも言っておくから」
「! ありがとうございます!! じゃあ、もう昼休みも終わっちゃうので失礼しますね」
棟冬六月は不思議な少女だった。
彼女の肩からヒバードを回収しつつ、僕は思う。
六道骸にやられたことは、今でも思い出すだけでムカつく。
だけど今日棟冬六月と出会って、いつの間にか荒れ狂う憤りは薄れていた。
「…………変なの」
廊下の端へと消えていく彼女を横目に、僕は一人首をかしげた。

*****

六月ちゃん。
六月ちゃん。
六月ちゃん。
前のお弁当の時間は、私と花と六月ちゃんだけのものだった。
花が学校を休んで、ようやく私と六月ちゃんだけの時間になったのに。
今度はツナ君たちに邪魔されちゃった。
でも、仕方ない。
鼠がいなくなっただけでも喜ばなくちゃ。
今はまだ、生かしておいてあげる。
だっていざというときは。
「……虫けらは、踏み潰せばいいよね」
「? 今京子ちゃん、何か言った?」
「うぅん、何も!」
可愛い私の六月ちゃん。
私が見つけた六月ちゃん。
優しい六月ちゃん。
大好きな六月ちゃん。



……六月ちゃんは、誰にも渡さない。
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