勿忘草の心2

□7.返答
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ざまぁみろっての。
七花が誰か一人を選んでない以上、一番近いのは弟分のオレ。
「なんだかうれしい! ほんとの弟より、よっぽどかわいい弟ができたみたい」
顔をほころばせる七花を見て、オレは我慢できずにまた抱きついた。でも七花は嫌がるどころか、ぎゅって抱き返してくれる。
「しししっ。七花、大好きだぜっ」
「私もベルくん、だいすき!」
やっぱりオレって天才かも。
とりあえず、今までの長い七花不足を補うように抱きしめる。
「う゛……う゛お゛ぉい、なんでベルだけこんないい思いしてんだぁ……?」
どことなく覇気のないスク先輩に、オレは七花に気付かれないよう鼻で笑ってやった。
「! こんのクソガキぃ……!」
スク先輩はわなわな震えてるけど、オレはちっとも怖くない。だって七花が、オレを庇うように立ってスク先輩を叱ってるから。
「こら! スっくん、ベルくんは同じSP仲間なんでしょ!? そんな言い方したら駄目!」
「そ……それとこれとは話が別なんだぁ!!」
七花はオレの頭を優しくなでて、キッとスクアーロに向き直った。
「とにかく明日は、ベルくんとショッピングに行くの。邪魔しないでね!」
スクアーロはぐっ、と詰まって、しかしまだ粘る。
「なら……っ明後日、オレとデートしろぉ!! しねぇなら、明日お前らを二人っきりになんて絶対させねぇえ!」
スクアーロが開き直った。予想外の台詞に、オレも七花もぽかんとする。
「どうなんだぁ!? 七花!」
「へ!? えと……うん、わかった」
七花は、スクアーロの気迫に圧されてうなずく。
これで明後日は七花をスクアーロに取られるけど、オレには明日がある。
明日は七花とオレだけで、七花専用の香水を選ぶんだ。想像しただけで胸が弾む。
この屋敷の持ち主である跳ね馬には悪いけど、滅多に会えねーんだ。たまには七花を独り占めしたって、いいよな?
「じゃあ、これで私の話は終わり。……みっともなく泣いちゃって、ごめんね。やっぱり亮斗くんのことを口にすると、冷静でいられないんだ」
それはそうだろう。七花の命がけの恋だ。そう簡単に、軽々しく言葉にできるものであるはずがない。
「でも……二人は私に告白してくれたから。辛いことを思い出しても、傷つけることになっても、ちゃんと言うべきだと思ったの」
オレはこういう、七花の誠実なところが好きだ。一途なところも、脆くても強く在ろうと、懸命に足掻くところも。
今は弟でもいいよ。上手くいけば、七花の周りの虫も駆除できるかもしんねーし。
だけどこれだけは、わかってほしい。
オレは七花が大好きだ。誰より大好きで誰より恋しくて、多分これが……こっ恥ずかしいけど、“愛”なんじゃないかと思う。
七花はボンゴレに関わりすぎているから、どこかのファミリーの抗争に巻き込まれる可能性も、ゼロじゃない。
――その時は、オレが七花を守る。誰を敵に回そうと、誰が相手だろうと。
明日は、七花とオレの初デートの日。
二人で選んだ香りが“七花の香り”になればいい。
それがオレと七花の、特別なつながりになればいい。







オレは腕の中の七花を愛しく思いながら、明日への期待に胸を膨らませた。


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