無双的駄文
□※天衣無縫の雲と竜/慶政?
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「良き湯を馳走になった」
慶次の勧めで旅の汚れを落とした政宗が、風呂場から上がって来た。
着替えにと慶次が貸してくれた湯帷子は、袖も肩幅も大きく、まるで父の着物を借りた子供である。
「ははは、やっぱり大きかったねぇ」
大笑いする慶次を、政宗は睨みつける。
「儂が小さいのではないぞ、貴様の体が無駄に大きいのじゃ!!」
「ははは!違いない!!」
からからと笑うと、慶次は政宗を軽く引き寄せた。
「…?おい」
「うん、手も小さいねぇ」
慶次が手を重ねると、政宗の手は全て隠れてしまう。
「だから儂が小さいのではなく貴様が…!」
「ああ…そうだな」
「…!?」
妙な気配を感じ、政宗が間を取ろうとした時には遅かった。
「あ!」
「俺のガタイがデカいから、こうしてお前さんをすっぽり包み込めるんだろうさ」
不敵に微笑んだ慶次は、その太い腕で政宗の腰を後ろから抱き寄せる。
「け…慶次貴様!!」
不意に重心が崩され、倒れ込んだ政宗は、慶次の膝に乗せられる形となった。
「細い腰だねぇ、こんなんでよく戦場に出られるもんだ」
「う…ぁっ//」
やわやわと脇腹を弄られ、政宗の声が裏返る。
「こ、こら、何をする!」
恥ずかしくなった政宗は抵抗を試みるものの、如何せん体格差があり過ぎる。
「う…や、止めよ…///」
不埒な動きをする手に爪を立ててみるが、びくともしない。
それどころか、軽々と抱き上げられ、更に背中を慶次に預ける羽目になった。
「慶次…!」
子供のような格好で抱かれた屈辱に、気位の高い政宗は遂に怒りを露わにする。
「侮辱するにも程があるわ!!離せ、離さぬか!!」
が、喚く政宗に、慶次は思いも寄らぬ事を言った。
「ふ…政宗、気に入らなねぇなら自力で抜け出してみたらどうだい?」
「な、何じゃと!?」
後ろを振り向いた政宗の隻眼が、驚きに見開かれる。
其処に居たのは、既に己の知っている穏やかな浮雲などではなく、ぎらついた瞳をした一頭の獣だったからだ。
「…慶…次…?」
「何驚いてるんだい?最近戦もないから退屈していてな、ちょうど兎相手でもいいから遊んでみたいと思ってた所だったんだ。
見事俺の手から抜け出せたら…仕官の話、考えてやってもいいぜ?」
「ま、誠か!?しかし…」
「なぁ政宗。有り余る力を発散するには、方法は2つだ。
一つは戦い、そしてもう一つは…」
「Σひぁっ…!!」
突然下腹部に触れられて、政宗の腰が飛び跳ねる。
「こっちをすっきりさせる事さ」
虎の退屈凌ぎはこうして始まった。