無双的駄文

□※愛のお仕置き部屋其弐/清三編
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機嫌を直した清正は、改めて仕事をこなす三成の横顔を見つめていた。

(華奢な体だな…それに下手な女より綺麗なー…)

そこで、いやいや、と首を振る。

幾ら顔が綺麗でも、性格があれでは台無しだ。

侍女達や一部の男達は美形だなどと持て囃すが、清正は他人を寄せつけぬ怜悧な美貌は好きではなかった。

(やっぱり俺は、おねね様のように笑顔の柔らかいー)

カタリ…、

「!」

余所事を考えていたら、不意に三成が筆を置いた。

「清正…起きたのか」

「ん…ああ」

振り返る気配に僅かに居住まいを正すと、清正はわざと素っ気なく返事をする。

少しだけ気まずかった。

そんな清正の様子を別段気に留めるでもなく、三成は唐突に意外な事を言った。

「清正…腹は減っているか?」

「え…?」

突然の質問に目を丸くしていると、三成は面倒そうな顔で重ねて問い掛けた。

「これが要るか、と聞いてる」

見れば三成の手には、黒い酒瓶が一つあった。

「どうしたんだ?それ」

清正は怪訝な顔をする。

「どうもこうも、此処へ連れて来られる時に、正則が隠して寄越したのだ」

「ああ、そうか」

今日は罰として晩御飯抜き、とねねは言っていた。

だから正則は気を利かせて酒を持たせてくれたのだろう。

しかし、食べ物よりも酒瓶を寄越すあたりが実に酒好きの正則らしい。

「どうせこれはお前向けだろう、好きに飲むといい」

「あ、おい」

清正は、瓶を押しつけるなり再び背を向けようとする三成を呼び止めた。

「お前は飲まないのか?飯の代わりにはならないが、ないよりマシだろ」

「知っているだろう、俺は下戸だ。それに腹など減っていない」

が、言い終わるか終わらない内に、三成の腹がぐうと鳴いた。

「腹の音だけは素直みたいだな」

顔を赤くする三成に、清正は笑って酒瓶を差し出した。
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