無双的駄文

□※愛のお仕置き部屋其弐/清三編
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「ん…」

ガタガタと騒がしい音で、清正は目を覚ました。

「なん…だ」

瞼を擦って音の方向を見ると、三成が何やら指示を出している。

その指の先を目で追うと、三成愛用の文机を、二人組みの小者が牢内に運び込んでいる所だった。

「違う、机は此処へ、肘置きはこっちだ」

「おい、三成。何やってんだ?」


「見れば分かるだろう」

「見えるから言ってんだ」

机に続き、座敷内に次々と書類が運び入れられる。

あっという間に、三成の周りは紙の山となった。

「おい、勘弁しろよ」

途端に狭くなる座敷に、清正は閉口する。

「何を言っている。俺が居らねば政は回らんのだ。此処に居るからといって怠ける訳にはゆくまい」

「だからってな…お前何日この中に籠もる気だ」

極端にも程がある。

とても二三日で捌ける量ではない。

「明日の晩迄に仕上げる分だ」

「明日!?」

清正は呆れた。

三成が無茶な仕事をする事は知っていたが、ここまでとは。

「いつもの事だ」

「いつもったって…」

清正は再び、書類の山に目を遣る。

これが明日までに仕上がるとは、とても思えなかった。

が、三成は清正がまだ言い終わらない内に、さっと座につき筆を執った。

「おい…」

「俺は貴様と無駄話をしている暇はないのだよ」

相変わらずの言い草にムッとしながらも、清正はそれをぐっと抑える。

「少し手伝って遣ろうか?」

全部と言わずとも、判を押したり補佐する事くらいは出来る。

しかし、多少なりとも負担を減らして遣ろうという清正の厚意は、三成によって一蹴された。

「無用だ、却って仕事を増やされては堪らん。邪魔にならぬ様部屋の隅で寝ていろ」

「あのな、お前そういう事しか言えないのか?」

「知っての通りだ」

「チッ…もういい」

三成のあまりに横柄な態度に怒る気も失せ、清正は三成の対角に陣取って、運動を始めた。

が、間もなく。

「狭いのだから揺らすな清正、筆が転がる」

と三成の檄が飛び、清正は仕方なしに胡座をかいた。
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