無双的駄文

□※織女惜別/兼政
2ページ/8ページ


深夜ー。

山深き荒屋の縁に、二人の人影がある。

一人は知性と意思の強さを宿した端正な顔立ちの男。

一方の青年は凛々しい中にも、どこか愛らしさを感じさせる大きな目をしていた。

先程から二人は大した会話も無く、辺りにはひっそりとした吐息と虫の音だけが響いている。

若き梟雄と呼ばれる青年は、隣の男に肩を預けたまま、薄く瞼を閉じていた。

「どうした政宗、今宵は大人しいな」

男がそっと髪に触れると、政宗は急に不機嫌な表情を浮かべる。

「別に…何でもない」

唇を尖らせた政宗を見て、男…兼続は困ったように微笑う。

「なんだ、もう眠たいのか」

「…眠くなど無いわ」

子供じゃあるまいし、と言う政宗の表情は、しかし兼続の目には十分幼く映る。

いつものようにからかおうかと思ったが、今はこじらせると不味いと察し、兼続は言葉を飲み込んだ。

「お前がそう大人しいと調子が狂う。何か心配事か?」

努めて優しい口調で、兼続は語り掛ける。

戯れに抱き寄せてみても、政宗は逆らわない。

「ん?」

促してみても、兼続の胸に顔を埋めたままじっとしている。

「本当に…調子が狂うな」


困ったように笑うと、兼続は政宗の体を毛氈に優しく横たえた。


「ん…あっ…あ…っ」

首に幾度も喰むような口づけを落とされ、政宗は息を乱す。

「は…あ…っ」

兼続のなすがままに着物を脱がされ、肌理の細かい肌が月光に晒される。

「んっ…んんっ…」

小さな胸の飾りを舐められると、うっすら汗を浮かべた政宗の白い顎が仰け反る。

政宗が天を仰ぐと、崩れかけた荒屋の天井から、満天の星空が覗いていた。

瞬間、忘我の境地にあった政宗の表情が、深い翳りを帯びる。

唇を重ねようとした兼続は、そこでふと政宗の瞳が濡れている事に気づいた。

「政宗…?」

己を通り越す目線の先を追えば、その先には天がある。

兼続は漸く政宗の瞳に宿る想いを理解した。

「そういえば…今日は七夕だったな」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ