無双的駄文

□笄/兼政
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「見つからないと何故分かる!!」

不意に兼続が声を張り上げた。

突然の剣幕に、政宗は一瞬固まった。

が、そこは政宗、直ぐに負けじと声を張り上げる。

「馬鹿め!!無駄な事を無駄と言った迄じゃ!!」

「無駄とは何だ!山犬!」

「付き合って居れんわ馬鹿めが!!」

我ながら上手い、と政宗は思った。

兼続に調子を合わせて怒ったふりをすれば、この話を無かった事に出来るであろう。

が、しかし…話は思わぬ方向へ。

「…相分かった」

「漸く分かり居ったか馬鹿め」

「然り、山犬などにはもう頼まぬ」

「ふん」

「私自らの手で探し出す」

「ああ…って、何ぃ!?」

言うなり立ち上がろうとする兼続を、慌てて引き留める。

「ま、待てっ正気か兼続!?」

「私は…初めから本気だ!!」

不味い、という言葉が政宗の頭の中で木霊する。

この勢いでは、執念で娘の手掛かりを見付け兼ねない。

まして兼続は秀吉に認められる程頭脳明晰な男。

娘の正体が突き止められるのは、時間の問題かも知れない。

どうしたら…

其れしか無い。

政宗は覚悟を決めた。

死ぬ程嫌だが仕方無い。

我が身…いや、伊達家の名誉には代えられないのだ。


大事そうに笄を仕舞い、座敷を出ようとする兼続を政宗は呼び止める。

「ま、待て兼続!!」

悲壮感の入り混じる声に、兼続は何事かと振り返る。

「どうした、山犬。今更止めたとて…」

「儂も行く!」

「何?」

「貴様の執念には負けたわ、儂も…付き合って遣る!!」

(こうなったら行く先々で邪魔をし、諦めてさせて遣るしかあるまい!)

決意を固く胸に秘め、政宗は高らかに兼続への同行を宣言した。
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