無双的駄文
□笄/兼政
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兼続が上杉の使いで此方に来る事を知った政宗は、悪戯心を起こして城下町へと潜入した。
それも、しっかと変装をして。
久方振りに会う兼続の姿を盗み見し、あわよくばからかってやろうという魂胆。
物売りの軒先を借り、町人に成りすました…迄は良かったのだが。
途中、予期せぬ事態が起きた。
路地に置かれた荷駄が倒れた拍子に、将の一人の乗っていた馬が暴れ出したのだ。
馬は将を振り落とし、鬣を振り乱して駈け回る。
程なくして、馬は政宗の居る方へ向かって来た。
こっそりと見物する算段が崩れた政宗は、騒ぎに乗じて立ち去ろうとしていたのだがー。
政宗の横から、不意に小さな影が現れた。
見れば年の頃6つ位の子供だ。
騒ぎを聞きつけて出て来たものであろう、音のしている方へ近寄ろうとする。
「おい童、危ないぞ!」
政宗が注意を促したその時、突如暴れ馬の足が子供へと向いた。
「馬鹿がっ…!!」
馬が襲い掛かろうとする瞬間、咄嗟に政宗は、馬と子供の間に割って入った。
そのまま瞬時に子供を抱え、跳ぼうとしたが着物が邪魔で上手く跳べない。
「くっ…間に合わぬ!」
子供を庇うように体を伏せた時だった。
「てぁっ」