無双的駄文

□竜の味噌汁/兼→政←幸
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「…流石に、やり過ぎたか」

天井まで穴だらけになった部屋を眺め、漸くその考えに至った兼続。

政宗相手だと、ついつい言い過ぎてしまうらしい。

弾を全て撃ち尽くすと、政宗はすっかり気分を害して出て行ってしまった。

「それを、今更言うのかい」

さしもの慶次も苦笑する。

「あーあ、やっちまったな」

夥しい銃痕を観察しながら孫市が顎をさする。

中でも兼続に一番非難がましい目線を寄越すのは…。

「兼続殿!!政宗殿に直ぐお詫びを!!」

「そう怒鳴るな幸村」

幸村に詰め寄られ、兼続はやや困った顔をする。

普段は温厚な幸村が、何故か先頭に立って怒っているのだ。

そんな幸村を、慶次が面白そうに冷やかす。

「おや、幸村がそんなに怒るなんて珍しいねぇ。ははは、政宗に惚れてでもいるのかい!!」

と、ここまではいつもの調子で冗談を飛ばしていたのだが。

その瞬間、

「………っ!!」

ボッと音がしそうな程、幸村の顔が朱に染まった。

「…え、」

慶次の目が見開く。

「へ?」

と、孫市は間抜けな声を出した。

兼続はというと。

「ははは、幸村があんな山犬になど…」

と豪快に笑い飛ばしたのだが。

「わ、笑わないで下さい!」


と幸村に睨まれる。

「政宗殿はその…私の憧れなのです」

語尾を弱めたものの、赤面しつつそう告げた幸村には、何やら妙な気迫が宿りつつあった。

それに釣られるように、慶次は壁にもたれた体を起こす。

「幸村、本気なのかい」


「無論です。だからこそ今日のお招きで頂く手料理を、心待ちにして居りました…しかし」

幸村は、兼続を一瞥する。

「兼続殿」

「な、何だ」

呼ばれて兼続も、知らずに背筋が伸びる。

「今日は大人しくしていて頂きますよ」

「……むう…」

迫力を増した幸村に、兼続も只頷くしか無かった。
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