無双的駄文
□竜の味噌汁/兼→政←幸
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孫市に後を任せた政宗は、当主専用台所へ向かうと、自ら点てた茶を盆に載せ座敷へと運ぶ。
座敷の障子は、見事な庭が良く見えるように開け放たれている。
「長旅であったからな、喉が渇いたであろう」
労りの言葉を掛けると、政宗は並んで座る慶次、幸村、次いで孫市へと茶を差し出す。
「ああ、当主自ら悪いねぇ」
「これは!政宗殿に淹れて頂けるとは…」
光栄です、と幸村は感激する。
「政宗の淹れる茶は格別だからな」
孫市も嬉々として茶を受ける。
が、最後の兼続には…政宗は少し乱暴に置く。
「危ないではないか、山犬」
不満を鳴らす兼続を無視して、政宗は席へと着いた。
「美味い!」
一口啜ると、慶次は破顔した。
「本当に、美味しいです」
背筋を伸ばしたまま、折り目正しく味わう幸村。
「だな」
いつも通り美味そうに啜る孫市。
そして兼続は…
持っている茶碗に口を付けず、目を細めながらいつまでも回したり匂いを嗅いだり。
「あの、兼続殿何を…」
正面に座る幸村が、その所作に顔を引き吊らせる。
「毒見だ」
臆面無く言い切った兼続に、場の空気が凍った。
「おい、政宗…」
沈黙を守る政宗の顔を覗き込む孫市。
そしていち早く、その危機を察知した。
「逃げろ!慶次、幸村っ」
そこは傭兵の俊敏さで、同時に孫市は、転げるように部屋を飛び出していた。