無双的駄文

□*削り氷の味/兼政
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燦々と照りつける日差し…簾で僅かに緩和されても、流れ落ちる汗は止まらない。

それでも政宗は上機嫌だった。

何故なら。

「ん、冷たい…」

舶来品の硝子皿に盛りつけられた氷の山を、小さな匙で口に運ぶ。

甘葛の汁で煮た野苺が、細かい氷によく合った。

「わざわざ氷室を作らせた甲斐があったな」

そうほくそ笑んだ時、政宗の上に影が差した。

「こんな所にいたか、政宗」

見上げると、直ぐ隣に兼続が来ていた。

「兼続?…そういえば、約束の日取りは今日であったか」

初物の氷が届く事に舞い上がり、政宗は兼続が訪ねて来る事をすっかり失念していた。

「まさか、忘れていたのか」

「い、いや、予定より早かった故驚いただけじゃ…」

俄かに表情の険しくなる兼続に、政宗は慌てて取り繕う。

兼続は一瞬疑り深い目線を寄越したが、直ぐにその目を政宗の持つ器に移す。

「ほう、もしやこれは削り氷か。珍しい物を食べているな」

感心する兼続に、政宗は得意になる。

「であろう、体が涼むぞ。だが…」

言うなり器を掴むと、政宗は残っていた汁と氷を飲み干した。

「味わい損ねたな、今ので最後じゃ」


にやりと笑うと、政宗は見せつけるように赤く色づいた唇を舐める。

実際は少しからかっただけで、氷はまだ台所に残っているのだが。

しかし…

「ほう?今のが最後か」

そう言って近づく兼続の声音が、微妙に笑いを含んでいた。

「ではその最後の一口は、私もご相伴に預かろうか」

嫌な予感がして、政宗は否定を口にしようとするのだが、もう遅かった。

「待っ…Σん…むっ!」

言い終わる前に顎を掴まれ、唇を奪われる。

氷で冷え切った政宗の唇に、兼続の熱い唇が重なった。

「熱っ…」

突如感じたその温度に、政宗は反射的に身震いするが、兼続の侵略は止まらない。

屋敷の庭先という事もあり暴れる政宗だが、がっしりと腰に手を廻され、身動きを封じられてしまう。

「っ…ぁ…んっ」

さわさわと腰から背中を愛撫され、時折重ね合わせた唇から甘い声が漏れる。

「んんっ……ふ…ぁ//」

舌を吸われ、たっぷりと擦り合わされて、絡め取られる。

歯茎から上顎迄舐められて、政宗はぞくぞくと身悶えた。

「…はっ…ぁ…//」

ようやく離された時には、政宗の全身はすっかり朱に染まっていた。


「はぁ…はぁ…っ//」

「大丈夫か?」

がくりと崩れ落ちる政宗の体を、がすかさず兼続が支える。

その腕に抱き留められながら、政宗は荒い息で兼続を詰る。

「こ…の…馬鹿め!折角涼んでおったのにー」

「すっかり熱くなってしまったようだな」

政宗を優しく木陰に降ろすと、兼続は愉快そうに笑った。





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