無双的駄文
□笄/兼政
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事の発端はこうだ。
「此の持ち主を探して欲しい」
上杉の使者として伊達家を訪れていた兼続。
政宗からの書状を受け取り公務を終えた後、彼は私的な頼みだと言って一本の笄を差し出した。
その時僅かに政宗の顔色が変わった事に、彼が気付いたか定かでは無いがー。
「な、なんじゃと?」
思わず声が裏返ってしまい慌てる政宗だったが、兼続は気に留めぬ様子で話を続けた。
「だから、この笄の持ち主を探して欲しいと言っているのだ」
懐紙に包まれた笄を、熱い眼差しで見詰める兼続。
(不味い…)
政宗は、背中に冷たい汗が伝うのを感じた。