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□summer
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「はあぁー」
「何だよ秋人。幸せ逃げるだろ溜息つくならあっち行け」

 本気で言っているのが秋人の癪に触る。

「和馬ぁー。普通友達が溜息ついたら“どうした”って聞くものだろ?」
「あー、はいはい。どうした?(棒読み)」
「夏兄が………」
「“欝陶しい”だろ?」
「……そう」

 秋人と和馬のこのやりとりも、もはやお馴染みになりつつある。

「はあぁー」

 二回目の溜息をついた瞬間、秋人のケータイが鳴った。

「…出ないのか?」
「出たくない…」
「…夏樹さんか。着信うるさいから出ろっ」
「あっ、こら!」

 和馬が勝手に通話ボタンを押したので、出ざるを得なくなってしまった。

「…もしもし」
『あ、秋人?学校終わった?』
「終わったけど」
『お願いがあるんだけど、俺の部屋のテーブルにある紙袋持って来てくれない?』
「は?」
『いつものスタジオだからよろしくっ!』
「ちょっ、あ…切られてる」

 用件だけ手短に伝えると切られてしまった。
いつもは秋人が切るまで延々と“秋人可愛い”だの“秋人大好き”と喋り続けているのに、よっぽど急いでいたようだ。

「夏樹さん何て?」
「大事な物を忘れたみたい」
「へぇ、じゃあ急がなきゃ」
「えぇー」
「“えぇー”じゃない。秋人もこの間課題届けてもらっただろ?」
「うぅー」

 和馬に責められ、届けることになった。
 
 
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