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□あなたの気持ち、いただきます
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 桜の花咲く春。
真新しい制服に身を包み、俺の高校生活が始まった。

「和樹ー昼飯食おーぜー」
「友也待って、購買付き合って」
「あ、おい!走んなくてもいいだろっ」
「だって!」

 最近の楽しみは、昼飯。
中学の給食と違って、学食、購買、コンビニ…自由に選べるのが嬉しい。
何か、大人になったぁーって感じだ。

「あった!」

 狭い購買部の中、人混み掻き分け手にしたのは、焼きそばパンとメロンパン。
学校に出入りしてるパン屋『crown』のパンはすごく旨い。
特に秘伝ソースの焼きそばパン、恋を叶えると評判のハート型メロンパンは人気で、少し遅れただけで売り切れてしまう程だ。

「和樹ー腹減ってんだから、パン買うくらいで走らせんなよ…」
「ムッ…パンくらいってなんだよ。ここのパンめちゃくちゃ旨いんだぞっ」
「はーいはい」

(バカにしてるな…。ふん!分けてやんないからいーもんっ)

「550円です」
「えっ…あぁ、すいません!えっと…」

 話に夢中になっていてパン代を準備し忘れていた。
パン屋のお兄さんに言われて慌てて渡す。

「すいま…」
「混んでて忙しいから、騒ぐなら外でやってくれ」

 お兄さんは代金を受け取ると、実に不機嫌そうに言った。

「…あ、う…すいません、でした」
 
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−
 
「キーッむかつくーっ!」
「まぁまぁ…」
「和樹、お前あんなこと言われて頭にこないのかよ!?」

 怒り狂っているのは俺じゃない。
あの場に一緒に行った友也だ。

「まぁ実際、俺達うるさかったし、かなり混んでたから当然と言えば当然だろ?」
「…そうかぁ?」
「そうだよ」

 高校生になって少し浮かれ過ぎていた自覚があるから、逆にお兄さんにキツく言われて良かったのかもしれない。

「それより、急がないと昼休み終わっちゃうよ。早く教室戻ろ」
「げっ、急げー!」

 怒られてちょっとヘコんだけど大丈夫。
俺には超ー美味しい焼きそばパンとメロンパンがあるから!
美味しいものは人を幸せにするっていうけど本当かもしれない。
食べると元気になるような気がするんだ。

(あのお兄さんが作ってるのかなぁ。すごいなぁ…)
 
 
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