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□trick or treat!
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 10月31日、今日はハロウィーンのお祭り。
街は、仮装をした子ども達で賑わっています。
みんなウキウキソワソワ。
高揚感を抑えられません。

 おや?
ここにも盛り上がっているご家庭がありました。
どうやら『高宮』さんと言うご家庭のようです。
ちょっと覗いてみましょう。

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−
 
《Happy Helloween 〜Chiharu〜》
 
「何故俺がこんな格好をしなくてはいけないんだ…。秋人が見たら何て言うか…」

 その答えは簡単。
“作者の命令だから”である。
さて、ドラキュラの衣装に身を包み、自宅玄関前で絶望的な顔をしているのは、高宮家長男千春。
うんざりと青ざめた顔色が、よりリアルなドラキュラを演出している。

「馬鹿らしい…。だが作者から、やらないと秋人と一生くっつけてやらんと脅されたから仕方ない。まったく、非道な作者だ」

 ぶつくさと文句を言いながらも、作者の指示に従う千春。
どうやら“秋人”と言う言葉にかなり弱いらしい。
大きく息を吸い込み、気持ちを落ち着かせると、思いきって玄関ベルを鳴らした。

♪ピンポ〜ン

「はーい。どちらさ、ま…」

 ドアを開けて現れたのは、一番会いたくなかった秋人だった。
秋人は、玄関を開けたまま、ドラキュラ姿の千春を見て固まっている。

「…trick or treat」
「えっ…」

(くそっ!やっぱり秋人引いているじゃないか。作者め、後で覚えてろよ…)

「す…すげー!!」
「!?」
「春兄本物のドラキュラみたい!発音も完璧だし、超ー格好良いよ!!」
「え、あ、あぁ…」

(信じられん…まさか誉められるとは)

「あ、そうだ。お菓子忘れてた。はい、どうぞ!」
「!!」

 動揺している千春にとどめの一撃。
たくさんのチョコレートを抱え、秋人のとびっきりの笑顔が輝く。
不意打ちを喰らった千春は、目眩を起こしながら、フラフラと歩き出した。

「え、春兄ちゃん!チョコは!?」
「いや、もう、十分ご馳走になったよ」
「俺まだ何もご馳走してないんだけど…」
「じゃあ…」

 光に弱いドラキュラは、秋人の太陽笑顔にやられて帰って行きましたとさ。
 
 
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