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□秋だから
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「………」
「なぁ」

 俺は、先程から本の虫状態の恋人に声を掛けた。

「………」

 パラリとページを捲る音だけが静かな部屋に響く。
沈黙に耐えきれなくなった俺は、ソファーを降り、足元で膝を抱えて読み耽っている晃を脚の間に入れ、背後から抱き締める形で座った。

「………」

 晃の肩に顎を乗せ、手元を覗くと、何語だか分からない文字が鬼のように並んだ分厚い本を読んでいた。

(ゲっ、こんなの読んでんのかよ…。一瞬見ただけで頭痛くなりそうだ)

 俺の恋人晃は、日本で一番頭の良い某大学の大学院で、何だか分からないけどスゲー難しい研究をしている。
大学始まって以来の秀才らしい。

「あーきーらっ」
「………」

 研究命の晃は、暇さえあれば本を読んでいる。
そして、決まってこんな状態になる。
集中しすぎて、周りが見えなくなるらしい。

「………」
「………」

(晃相変わらず細っせーなぁ。肩とかガリガリだし。あ、でも尻とか太腿はやらけぇんだよな。色白で、肌に吸い付く感じとか堪んねぇ。……ヤベぇ、変な気分になってきた)

 俺は思わず、襟元から覗く白いうなじに舌を這わせた。

「ひやぁっ!?」

 本気で驚いたんだろう、身体が大きく跳ね、高い声があがる。

「なっ、何するんだよ!?」
「晃が俺を放ったらかしにしてるのが悪いんだろ」

 晃が冷たい視線を向けてきた。
綺麗な顔をしているだけに、こう言う時の表情は氷のように冷たい。

「折角の祝日なのにもったいないだろ!?秋と言えばさぁ…」
「読書の秋だろ?」
「違ーう!!」

 確かに、晃にとってはそうかもしれない。
でも、俺は…

「スポーツの秋だろっ!!と言うことで、今から身体を動かします」
「何言っ…わぁっ!?」
 
 
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