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□拝啓 愛しい君へ
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♪〜

 さっきから何度目だろう。
普段あまり鳴らない携帯電話が、せわしなく着信を知らせる。
そして俺は、その都度…

ブツッ!! … … …。

 ワンコールのうちに、思いきり切ってやるのだった。

(しつこい…)

 着信履歴など見なくても相手は分かる。
俺の番号を知っている人はごくわずかで、こんな馬鹿みたいにしつこく掛けて来るのは健悟しかいない。

 なぜこんな状況にあるのかと言うと…

 ・
 ・
 ・

「ぁっ…やめっ…」
「いいじゃん、ね?」

 健悟の手が服の中に滑り込み、いやらしく素肌を撫でていく。

「…は、ぁ…誰かに、バレたら…んっ…どうすっ、んあぁ…」
「大丈夫だいじょーぶっ」

 どこにそんな確信があるのか…取り敢えず大丈夫な訳がない。
俺達がいるのは、服屋の試着室の中だ。
試着室と言っても、人一人が入れるくらいの小さなスペースを、カーテン一枚で隠しただけの簡易な物。
そんな所で男二人が良からぬことをしていたら、バレるのも時間の問題だ。

「やめ、ろ…ぁっく…」
「晃の身体は嫌がってないだろ?」
「んっ…んぅ、ふぁ…」

 追討ちを掛けるよう唇を塞ぎ、舌や上顎、柔らかい粘膜を舐め回され力が抜ける。

(…何でコイツこんなに巧いんだよっ)

「もう気持ちよくなってきた?相変わらず晃えっろぉ…」

 健悟の手が下半身に伸びる。
いい加減頭に来た俺は、未だ咥内を貪ろうとする唇を思いきり噛んでやった。

「いだぁ――っ!!」
「やめろって言ってんだろ!どこでもサカりやがって!!」
「え、ちょ晃…声おっき…」
「うるさいっ!!」

 勢いよくカーテンを開け、動けずにいる健悟を置いて店を出た。

 ・
 ・
 ・

 と言う非常にくだらない状況だ。

(アイツといると、俺までアホになる)

 少し自分自身も冷静になろうと思い、街をぶらついていたのだった。
 
 
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