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□恋する催眠術
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(えぇー!?律は冗談で催眠にかかった振りするタイプじゃないし…マジ?)
「り、律君…?おーい…」
かけるつもりで催眠術をしたけど、いざかかるとビビってしまう。
「い、いかん…ビビるな俺っ」
虚ろな瞳をした律の前に再びネックレスをかざした。
「律は俺を好きになる…律は俺を好きになる…律は俺を好きになる…」
ネックレスをゆっくり左右に振ると、大きな瞳が追いかける。
「今から3つ数えて指を鳴らします。するとあなたは覚醒します。そして、俺を好きになる…3、2、1…パチンッ」
「!!」
瞳に光が戻り、パチパチと瞬きをする。
ゴシゴシと両手で目を擦る仕草は子供みたいで本当に可愛らしい。
思わず唇を寄せたくなってしまう。
そんな俺の熱視線に気付いたのか、律がこちらを向き、両手で俺の頬を包んだ。
(え、何これ…展開速くない?ってか、律からキス?)
「り、律…?」
ニッコリと微笑む律は、この世に舞い降りた天使のようだ。
(あぁ、俺…律になら召されても良いかも)
幸せに浸っていると、待ち望んだ感触…
「…ぃででででえぇーっ!!」
律は俺の頬がちぎれるんじゃないかと思うくらいつねった。
「律!?催眠かかったんじゃないの!?」
「バーカっ!そんなのかかる訳ないだろ」
「えぇー!?ってか、痛い!本当に召されるとこだったよっ!」
「うっさい変態ッ!勝手に召されろ!」
そんなはずはない。さっきの律は、多分トランス状態に入っていた。
でも、全くの素人催眠なわけだし、成功する方がおかしいのかもしれない…。
「あぁー…」
「お前本当にバカだな。そんな催眠、かける必要ないのに」
「うぅ…俺の人生終わったぁー」
「最初から好きなんだから、これ以上好きになりようがないのに…」
律がボソリと呟いた一言を、俺は知らないのだった。
−end−