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□実験しましょう
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「それじゃあ早速、蓮見君の基礎データを採らせてもらおうか」
「基礎データ?」
「研究は地道な実験とデータ採集、それによる比較が命だからね」
「なるほど」
「伸長、体重、血液、脳波…諸々を測らせてもらいます」
「はい」

 胡散臭いと思っていたけど、何だか急に本格的になってきた。

「じゃあ、僕は先に行って準備してるから5分後位にラボまで来てくれるかな」
「はい」
「あ、後々の為契約書の控えに目を通しておいてね」
「…分かりました」

 加東が出ていったのを見送ると、ソファーに深く座り直した。
これから自身に起こることを想像すると、何となく心許ない気分で、とても契約書なんて読む気になれない。
俺は適当に準備室内を見学し、タイミングを見計らってラボへと向かった。

「し、失礼します」
「あ、いらっしゃい…うん、良い時間だ」

 時計を覗く加東の後ろには、見たこともないような機材がずらりと並ぶ。それだけで先が見えない不安感が襲う。

「そんなに硬くならなくて大丈夫。今日は身体測定みたいなものだから」
「は、はい…」
「じゃあ最初に血液採取しておこうか。あ、因みに僕医師免許持ってるのでご安心を」
「は、はぁ…」

 確かに、注射器を刺されるが痛くない。きっとかなり上手いのだろう。その華麗な手つきに見とれていると、採血はあっという間に終了していた。

「次は、身長・体重その他諸々の外的なデータと、脳波・脈拍・心電図・体温等の内的データを採ります」
「体重計とか見当たりませんけど、どうやって測るんですか?」
「ふっふっふ…よく聞いてくれました。実はこれなんです!」

 加東が指差す先には、一際目立つ大きな機械。まるで…

「MRI?」
「そうだね、見た目は似てるかもしれない。でもこれは僕が開発したもので、機械の表面全体がセンサーになっていて、さっき言ったあらゆるデータを採取する画期的なものだよ。あと、撮影記録用カメラも数十台内蔵されてるんだ。名前は…」
「名前は?」
「……『測るんです1号』!」
「…明らかに今決めましたよね?」
「い、いやー?」
「……」

 それにしても、生物学者ってこんな物も造れるものなのか?やっぱり胡散臭い。

「この中に横になってもらいたいんだけど、その前に今着てるもの全部脱いでもらえる?」
「ぜ、全部ですか…?」
「なるべく正確な数値が欲しいんだよね。まぁ、誰が見てるでもないしさ」
「今さっきカメラで記録するって言いましたよね…?」
「…」
「無理で、す…!?」

 きっぱり断ろうと思ったら、突然痺れるような変な感覚が全身を襲い、俺はその場に倒れ込んだ。
 
 
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