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□trick or treat!
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《Happy Helloween 〜Mifuyu〜》
「ちょっと!この衣装露骨過ぎない!?しかもこれ何気に女物のコスプレ衣装だし!悪趣味過ぎるだろ!選んだの誰だよ!?」
さすが兄弟というか、前の二人同様ぶつくさ…
いや、ギャンギャン文句を言っているのは、高宮家四男美冬。
いつもの天使キャラを作るのも忘れ、黒いオーラをだしている。
正にその性格を表す悪魔の衣装に身を包み、玄関前でイライラしていた。
「は?“文句をつけたら秋人と引き離してやる”って?…チッ、卑怯な作者だ…」
やはり“秋人”の効果は絶大だ。
あれほど吠えていた美冬も、その一言で大人しくなってしまった。
(くそっ…こうなったら、二度と小説を書けないように…)
何やらドス黒いことを考えながら玄関ベルを鳴らす。
♪ピンポ〜ン
「はーい、どちらさ、ま…」
ドアを開けて現れたのは、秋人だった。
秋人は、ドアを開けたまま、悪魔姿の美冬を見て固まった。
(うわ、秋兄ちゃん引いてる。作者め…よりにもよって女装させるとは…)
「trick or treat…」
秋人に女装姿を見られ、男としてのプライドがズタズタの美冬は、半ば自暴自棄になりながら指定された言葉を言った。
「か…」
「…?」
「か、かか、か、可愛い!」
「え…?」
全く予想外の言葉に呆然としていると、興奮した様子の秋人が勢い良く抱きついてきた。
「秋兄ちゃん、引いてたんじゃ…?」
「何で?引かないよ?似合い過ぎてびっくりしただけ」
(似合い過ぎ、か…)
それはそれで、男としては悲しいものがある。
秋人の場合、本心で言っているだけに尚更だった。
「でも、何で悪魔なんだ?美冬なら絶対天使の方が似合いそうだけど」
「さ、さぁ?変態作者の考えはよくわからないよ」
「そっか。でも美冬は俺の中で天使だよ」
「秋兄ちゃん…っ!」
(笑顔でそんな可愛いこと言われたら我慢出来なくなるじゃないか…!今すぐ押し倒したい…)
「え、何なに?“美冬が秋人を襲おうとしてる”って?」
「!!」
(げっ…作者の奴バラしやがった)
「そんなことする訳ないだろー?俺は美冬を信じてるよ。な、美冬?」
「え、あ、あぁ、うん」
「あ、そうだ。はい、クッキー」
「!!…ありがとう」
秋人の笑顔に少しの後ろめたさを感じながら、美冬は天使は秋人の方だな、と思い帰っていった。