main

□77777hit
1ページ/6ページ

 
「あー面白かった!ね、先輩」
「はぁー…」

 ウキウキ気分の俺とは反対に、ウンザリと溜め息を漏らす美人は葛城尚。我が校の生徒会長にして絶対的人気を誇る女王様だ。

 ツンと整った風貌とクールな性格から氷の女王と呼ばれている。と言っても女の子ではない。れっきとした男だ。

 そして俺達は、内緒で付き合っていたりする。今日は交渉に交渉を重ね、やっとこじつけた初デートなのだ。

「先輩?」
「篠原って前々から頭悪いと思ってたけど、あんなつまんない映画でよく笑えるな」
「えー?でも先輩だって、犯人が追われるシーンで笑ってたじゃないですか」
「なっ、笑ってない」
「笑ってま・し・た!時計見るふりしてフッて。あとプールに落ちるシーンと買い物のシーン、トイレのシーン、あと…」
「な、何でそんなに把握してんだよっ」
「そりゃあ、先輩のこと大好きだからに決まってるじゃないですか」
「ばっ…」

 雪のように白い頬を桜色に染めて俯く。

(うわぁ、可愛い…)

 学校の奴等は、先輩のこんな表情知らないんだろうな。そう思うと、顔の緩みが止まらない。きっと俺、今ものすごくだらしない表情をしているんだろうな。

「先輩、この後どうします?」

 クールな先輩のことだ、迷わず“帰る”と言いそうだが、わずかな望みをかけて尋ねてみる。

「あー…、うち来る?お前がやりたがってたPiiのソフトあるけど」
「え…えぇっ!?先輩の家ですか!?」
「何だよ…別に嫌ならいい」
「い、い、行きます!是非とも!!」
「あ、そ…」

 何これ…。俺は都合の良い夢を見ているのだろうか?不安になり、声をかける。

「せ、先輩…」
「何?」
「思っきりひっぱたいてくれません?」
「は…?」
「だから、俺のことひっぱたいて下さい」
「…悪いけど、俺そういう趣味ない」

 明らかにドン引きした様子の先輩は、一瞥すると、スタスタと歩いて行ってしまった。

「え、違っ…違うんです!せんぱーい…」
 
 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ