main
□60000hit
1ページ/9ページ
終業ベルまであと数秒…。
僕の緊張はピークに達していた。
キーンコーンカーンコーン …
「はい、それじゃあ今日はここまで。来週は今日のデッサンに色を塗ります」
「起立、礼、ありがとうございました」
挨拶を終えると、荷物を片付け皆そそくさと退室していく。
これから憩いの一時、昼休みなのだ。
「立花君、ちょっといいかな」
(来た…)
「はい」
高鳴る鼓動を抑え、呼ばれるまま美術準備室へと向かう。
「今日も、いいかな…?」
「はい。大丈夫です」
「貴重な昼休みなのに悪いね」
「いえ」
僕は毎週一回、美術の授業の後、先生の絵のモデルをしている。
何でも、先生が長年描きたかったイメージにピッタリなんだとか。
「今日はどんなポーズですか?」
「うん。今日はちょっと趣向を変えてみようかと思って。…協力してくれる?」
「はい…?」
改まって協力するも何も、僕はもともと先生に憧れていて、声を掛けられた時は驚いたけど、思わぬ接点が出来て大喜びしたくらいだ。
今更断るはずがない。
「良かった」
安心したのか、ふわりと微笑む。
先生の大人な笑顔に、ドキンと胸が高鳴る。
「…じゃあ、ちょっとごめんね?」
「え?」
“何がですか?”と訊こうとした時には、鼻と口をタオルのようなもので塞がれ、何か薬品を嗅がされていた。
「先、せ…?」
急に意識が遠退き、先生に抱き留められながら気を失ってしまった。