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 終業ベルまであと数秒…。
僕の緊張はピークに達していた。

 キーンコーンカーンコーン …

「はい、それじゃあ今日はここまで。来週は今日のデッサンに色を塗ります」
「起立、礼、ありがとうございました」

 挨拶を終えると、荷物を片付け皆そそくさと退室していく。
これから憩いの一時、昼休みなのだ。

「立花君、ちょっといいかな」

(来た…)

「はい」

 高鳴る鼓動を抑え、呼ばれるまま美術準備室へと向かう。

「今日も、いいかな…?」
「はい。大丈夫です」
「貴重な昼休みなのに悪いね」
「いえ」

 僕は毎週一回、美術の授業の後、先生の絵のモデルをしている。
何でも、先生が長年描きたかったイメージにピッタリなんだとか。

「今日はどんなポーズですか?」
「うん。今日はちょっと趣向を変えてみようかと思って。…協力してくれる?」
「はい…?」

 改まって協力するも何も、僕はもともと先生に憧れていて、声を掛けられた時は驚いたけど、思わぬ接点が出来て大喜びしたくらいだ。
今更断るはずがない。

「良かった」

 安心したのか、ふわりと微笑む。
先生の大人な笑顔に、ドキンと胸が高鳴る。

「…じゃあ、ちょっとごめんね?」
「え?」

 “何がですか?”と訊こうとした時には、鼻と口をタオルのようなもので塞がれ、何か薬品を嗅がされていた。

「先、せ…?」

 急に意識が遠退き、先生に抱き留められながら気を失ってしまった。
 
 
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