Identification case(未完)
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「もし及川さんが1課の言う通り現場付近にいたらどうなるんですか?」
意を決して聞いた僕に返ってきた答えはただ不安を煽るだけのものだった
「偶然に付近にいたのならいいが、故意に…例えば担当外捜査などを勝手に行うと厳罰の対象ともなりえるな。単独捜査も禁じられている」
「厳罰対象とはどのようなものでしょうか?」
「ん?ああ…減給はもちろんのことだが、今回は1課が絡んでるだろう?場合によっては異動や島流しもあり得る…」
(そんな…)
桐沢さんの言葉に僕は焦っていた
ただ犯人を捕まえたい
自分のせいで2課の仲間達を馬鹿にされたことを撤回させたい
ただそれだけなのに…
僕は桐沢さんの目が向けられている事に気づかないまま、納得のいかないやり場のない気持ちと葛藤していた
「…まぁアイツが悪いな」
「え?」
桐沢さんの言葉に驚いて顔を上げる
「1課に疑われる自体が甘い!事件は興味本位で片付くものじゃない!どうであれ及川には当分謹慎してもらうかな」
最後の一口を平らげながら桐沢課長がゆっくりと放った言葉に驚きを隠せない
桐沢課長はこんな方だっただろうか?
何を差し置いても仲間や部下を守るような情の厚い素敵な人だと…そう思っていたのに
「誤解です!及川さんはそんな興味本位とかではありません!」
及川さんがとても信頼している桐沢課長の言動に僕は思わずたて突いてしまう
信頼している部下をそんな風に言ってしまうなんて
及川さんが聞いたらどう思うんだろう
あれほどがんばっている及川さんなのに…
「…誤解?興味本位?」
(しまった!!)
つい気持ちの高ぶりで余計な事を言ってしまった事に気づく
「…木村、どういう事だ?」
鋭い目をした桐沢課長に凝視され僕は全てを告白するしかなかった