Lovers Collection
□サムライだって一人の男
2ページ/2ページ
〈愛菜の部屋〉
「コーヒーで良いですか?」
「あぁ、悪いな。」
「はい、どうぞ。」
コーヒーの入ったマグカップを愛菜がテーブルに置いたその時、オフショルダーのTシャツの袖がするりと落ちて、肩があらわになった。
「あっ…」
慌てて袖を引き上げる愛菜。
その顔はほのかに紅くて。
「すいません、わ、私ちょっと着替えてきますね!」
「……。」
「えっ、あの…。ご、とう…さん?」
俺は咄嗟に愛菜の腕を掴んでいた。
「愛菜…。」
「はい……、わっ!!」
掴んだ腕を勢いよく引き寄せると、愛菜はバランスを崩して俺に覆い被さるように倒れこんだ。
「す、すいません!大丈夫ですか!?」
「全然大丈夫じゃねーよ…。」
ボソッと呟く俺に慌てる愛菜。
「えっ!?どこか痛いですか!?どうしよう、ごめんなさ…」
俺は愛菜を思いきり抱き締めた。
「はぁ〜。どうしてくれんだよ…。言っとくが、そんな格好してるお前が悪いんだからな。覚悟しろよ。」
発した言葉は、情けないほど余裕がなかった。
「え、ちょ、ごと…」
愛菜の唇を塞ぐ。
「誠二。」
「せ、せい、じ……さん…。」
真っ赤な顔をして、消え入りそうな声で言う愛菜。
「フッ。さんは余計だけど、まっ、合格だな。」
愛菜を抱き上げ、そっとベッドに降ろす。
「しかしその格好、役とはいえ、気に入らないな。」
「や、やっぱり似合わないですよね…。」
「いや、意外と…。」
「意外と?」
「…何でもない。」
「(あれ?耳が赤いような…。)ふふっ。」
「何だよ。」
「いえ、何でもないです♪」
「お前…この状況でなかなかいい度胸だな。」
「えっ!いや、ごと…」
視線で圧力をかける。
「っ!……せい、じ…?」
「フッ。上出来だな。」
俺は愛菜の髪を撫でた。
「つーかその格好、俺の前で以外するなよ。」
「え、でもコレ衣装で着なきゃいけないんですけど…。」
「なら衣装を替えろ。」
「えぇ!?」
「いいな。とにかくその格好は俺の前以外禁止だ。」
「わ、分かりましたよ。」
「物分かりのいい女は嫌いじゃない。」
そう言って、愛菜の肩に俺のしるしを付けた。
「これでもうこの服は無理だな。」
「もぉ…。」
そして愛菜の耳を両手で塞いで俺は言った。
「こんな格好、他の奴に見せてたまるか…」
「え?今何て言ったんですか?」
「さぁな。」
月明かりが照らす部屋、
そう言って、
愛してるの代わりに
たくさんのキスを降らせた。
ーENDー