天王寺 豊

□strawberry Love
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「どないしたん?」

ビニールハウスの隅で座り込んでる涙目の女の子・・

僕はオカンと2人で親戚の家に遊びにきてて、今シーズン中だと言うイチゴ狩りを楽しんでた
親の世間話を横で待っているのにも飽きたし、イチゴを5つも食べたら腹いっぱいになったし、つまんないから敷地内を探検していた

「あんまり遠く行ったらあかんでぇ」
「わかってる〜!」

そこで見つけた女の子
小さなウサギのぬいぐるみ抱きしめて座り込んでた


『お母さんとはぐれちゃったの』

涙目の瞳からポロッと涙がこぼれた

(なんや迷子か・・)

「よし!一緒に探したるわ。そやから泣くな」

『うん…』

子供の僕らには広く感じる敷地内
手を差し伸べると女の子はギュッと強くつないできた





たくさん歩いても女の子のお母さんは見つからない
足も痛くなってきた。横を見ると女の子は疲れたのとまだ見つからない不安とでまた涙があふれていた

「なぁ自分何歳なん?」

『もうすぐ4歳…』

「なら僕の方が2つお兄ちゃんやな。あああ泣くなって!!面白いことしたるから」

必死で思いつく面白い事をしてみた

幼稚園で先生に笑ってもらった事とか…


『アハハハ。お兄ちゃん面白いね!しゃべり方も変!』

「変?しゃべり方は普通やけどなぁ」

よかった
笑ってくれた

『あ…大きなイチゴだ』

疲れて座り込んでた僕らの上には大きなイチゴがぶら下がってた

「食べたいんか?」

コクンとうなずく女の子に大きなイチゴを取ってあげた



その時



『麻奈っっ!!』

女の子のお母さんが走ってきて女の子をギュッと抱きしめた

(コイツ麻奈って言うんや…)

『もう!勝手に行ったらだめでしょ?お母さんもお父さんも心配したんだからっ!』

『…ごめんなさい。でもお兄ちゃんがいたから麻奈怖くなかったよ』

麻奈のお母さんが麻奈を抱きしめたまま僕を見た

『ぼく、ありがとうね』

僕の目線までしゃがみこんで優しく僕の頭をなでてくれた

『じゃあ麻奈行こうね』

麻奈が手を引かれ帰って行く
なんだか少し寂しいような悲しいようなつまんないような…
遠ざかって行く麻奈の姿に手を振った

「麻奈またな!」

僕が大きな声で叫ぶと麻奈が振り返ってお母さんに何か言うと僕のほうへ走ってきた

チュッ!!
『お兄ちゃんありがとう!バイバイ』

麻奈は僕のほっぺたにチュッっとキスをして、またお母さんのところへ戻っていった

僕は顔を真っ赤っかにしてキスをされた右のほっぺたを抑えた

「…。」

麻奈のために取ってあげていたイチゴがポトッと手から落ちたので慌てて拾って口にほおばった

「…あまっ。僕も母さんとこに戻ろ」

大きくて甘い香りのするたくさんのイチゴの中を僕は走った

イチゴの様に僕の顔がまだ真っ赤っかなままで…




いつかまた会えるかな?
何だかまた会える気がする…
いつかまた…










 
END

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