cigarette case

□FILE2
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午後一で及川ともう1つの現場へ赴く

ここも何の変哲もない住宅街
少し先には自治会有志だろうか小さい公園のような場所もある

こんな普通の住宅街で取引があるとすれば胸クソ悪い
思ってた以上に麻薬は市民の身近に巣くっているのか…これじゃ安心して生活なんてできないな
何が何でも摘発してやる…
親父のように俺は信念を貫く…




はり込むこと数時間…
閑静な住宅街は夕焼けで茜色にそまっている

『桐沢さん…』

「ああ…」

おそらく売人だろう
スーツは着ているが普通の会社員とはおもえない鋭い空気を纏っている
男は胸から携帯を取り出ししばらく話すと歩き出した

「…つけるぞ」

人混みなら通行人に紛れて尾行ができるが、こう人通りが少ないと神経を使う
かなりの距離を保ち慎重に男をつけるが突然男が走り出す

「チッ…気づかれたか…追うぞ!!」

「止まれ!」

急いで男の後を追う
男は益々足を速め小さな路地を曲がる



『キャッ!!』


足を止めて振り返ると及川がつまづいて転びそうになっていた

「大丈夫です!追ってください!!」

何とか体制を立て直した及川の姿を確認して俺は男の後を追った










しかし、男の姿はなく…





来た道を戻ると塀に片手をつき、右足首をさすっている及川の姿が目に入った

「…及川…」

戻ってきた俺に気づいた及川が泣きそうな顔をしていた
そんなに足が痛いのか…
無理をさせてしまったか…

『すみません…申し訳ありません…私のせいで』


ああ…泣きそうな顔は手ぶらで戻った俺を見てか
まったくお前って奴は…

「何言ってんだ。…足くじいたみたいだな」

『大丈夫です…それより…申し訳ありませんでした』

泣きそうな顔がまた一段とゆがむ

「謝るな。それより足見せてみろ」

近くの車止めに及川の腰を下ろさせた
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