cigarette case
□FILE1
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組織の本拠地と思われる場所に着くと車を下りて辺りを見回した
そこはなんてことない平凡な雑居ビル。平日の昼前だからか人通りは少ない
『桐沢さん!』
及川が俺の腕をひいて小声で呼びかけ、物かげにうながす
「どうした?」
『ビルから人が出てきました。微妙に不審です』
「なに?」
相手にさとられないように壁に身を寄せた
そこには今時の若い男がキャップを目深にかぶり、パーカーのポケットに手を入れ、周りを気にしている
「及川もっとこっちに寄れ、気づかれるぞ」
男に気づかれてはいけない・・及川の肩をグッと引き寄せた
引き寄せられた及川の一瞬驚いた表情と何故か少し赤い顔で深呼吸なんて気づく訳もなく俺は男の動向に目を光らせていた
「少し様子をみよう。おかしかったらバンかけ(職質)だ。周りにも不審な奴がいな・・・」
うをっ!!
なんで及川がこんなくっついてるんだ!?
うをっ!!
途中で言葉が切れた俺を不思議に思ったか及川が顔を上げるもんだから息のかかる至近距離で視線がぶつかる
「す・・すまん!悪意はない!」
及川の肩を引き寄せていた手をパッと離す
セクハラになるのか?パワハラか?
エロ課長と呼ばれてしまうのか?
あわてふためく俺
ん?
見ると及川はクスクスと口元に手をあて笑っている
「・・って何笑ってんだ?」
まだ笑いながら口元にあてた両手を上げる
俺の今の恰好を真似て・・
『すみません。まるで電車で間違われたチカンみたいで』
「・・似たようなもんだ」
行き場をなくしていた両手をズボンのポケットにしまった
『全然違いますよ。私は大丈夫です!桐沢さん、捜査に性別は気にしないでください。』
意外だった
そして恥ずかしい
いつも俺自身が言ってるじゃないか
《捜査に上司も部下もない》
性別だって然り
男も女も捜査には関係ない!仲間だ!
おとこ前だ!及川!
「女の子扱いは捜査外にとっとくか」
な?及川。