Lovers Collection
□二人の想い
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「及川行くぞ。」
『はい。』
二課に来て半年。仕事にも慣れてきて充実した日々を送っていた。私がコンビを組んでいるのは、二課の課長でもある桐沢サンだ。
「及川?困ったことないか?」
捜査に行くパトカーの中で聞かれる。
『困ったことですか?食欲が増したくらいですけど。』
「ハハハ。違うよ。仕事でだよ。」
『うちのボスは優しいし、皆さんも可愛がってくれますからね。』
「そうか。お前は可愛いからな。心配だよ。」
『可愛いくないです。』
「いや。心配だ。」
『お父さん心配しないで。』
「誰がお父さんだ!?」
『ギャーッ!!やめてー。』
二人で冗談を言い合いながらじゃれ合う。
こんな優しい上司に恵まれて、私は幸せだった。いつも私を気にかけてくれる桐沢サンに、私は安心感を覚えていた。
『今日も収穫なかったですね。』
聞き込みを終えた私達はパトカーで警視庁に帰っていた。
「まぁ、こんなもんだろ。最近はちょっと根詰めすぎだ。ちょっと息抜きでもするか?」
『えっ?』
「飯でも食いに行くぞ。」
そのまま私達はパトカーを置いて、桐沢サンの車で食事に向かった。
「さぁ。思う存分食え。」
『やった!!いただきまーす!!』
目の前に置かれた、たくさんの料理に私は目を輝かせて食事をする。
「本当、お前は可愛いな。」
『その可愛いって…動物とか子どもに向ける意味の可愛いですよね?』
「そうでもないぞ。ちゃんと一人の女として可愛いと思ってるんだけどな。」
『えっ…?』
ドキッとして桐沢サンを見つめるが…涼しい顔をして食事をしていた。
『冗談ですよね…?』
「はっ?何で冗談言わなきゃいけないんだよ。」
私はその言葉に少しの胸のときめきを感じて、食事を続けた。
「じゃ、ゆっくり寝ろよ。」
食事を終えた桐沢サンが車で自宅まで送ってくれた。
『はい。今日はご馳走様でした。』
「おう。おやすみ。」
桐沢サンが窓を開けて手を振ってくれる。
(かっこいいな…一人の女として見てるか…)
そんなことを思いながら、桐沢サンの車が見えなくなるまで見つめていた。