京橋 克之
□去る夏に鳴き声を奏で
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『もう秋ですね・・・』
海岸沿いを手を繋ぎながら歩く
捜査の帰りにあまりにも夕日が綺麗と微笑む貴女を見て、もっと笑って欲しくて車を停めた
潮風が少し冷たく感じる
夏の終わりを告げているようなそんな風だ
『ちょっと砂浜歩いていいですか?』
まるで子供のようにねだる貴女に負け、うなづくと嬉しそうな笑顔でひっぱられる
その笑顔が可愛らしくて・・愛しくて・・・
虐めたくなる・・・
『克之さん!ほらっ!砂浜がキュッキュッって!ほら!』
砂をリズミカルに踏み喜ぶ麻奈さん、貴女は本当に・・・
なんとも言えません
「これは鳴き砂というんです」
『鳴き砂?』
「綺麗な砂でないと鳴かないのです」
『へえ・・・』
感心しながら止めていた足を動かし、貴女はまた砂を踏み鳴らす
「私がもっと素敵な鳴き声を聞かせましょうか?」
『え?』
「ほら、こうすると・・・」
『あ・・・んっっ』
麻奈さんを後ろから抱きしめ耳たぶを甘く噛み、そのまま首筋に舌を這わせると甘美な吐息が流れる
『や・・・っ』
「体は止めて欲しそうではありませんが?貴女も綺麗ですから・・・とても美しい啼き声ですよ」
流れるように這わせた舌を傾け、こちらに向かせた貴女の唇に私の唇を重ねて舌を、気持ちを絡ませる
抱きしめていた片手を胸へと移すと更に甘美な吐息が私をくすぐる
「このまま・・貴女を啼かせ続けたいのですが、2課から電話です。仕方ありません・・・戻りましょう。そのかわり続きを今夜・・、たっぷり啼かせてさしあげましょう」
耳元で囁き、再び甘噛みをすると吐息に続いて洩れる艶っぽい声
それに共鳴するように鳴く足元の砂の音
そして
それはまるで去りゆく夏を惜しむかのように沈む夕陽を一層物悲しいものにさせ、尚更貴女を妖艶に映し私を虜にした
去りゆく夏を追いかけるように