桐沢 洋
□fall in ×××
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長かった職員会議を終えると窓の外は既に月が妖艶に輝いていた
「桐沢〜帰りにどう?」
同期の野村がクイックイッとジェスチャーで酒を飲む振りをする
「今日は止めとくわ!じゃあな」
何故だか何となく今日はそんな気分じゃなくて野村に手を振ると職員室を後にする
駐輪場で通勤用の俺の愛車に鍵をかけるとブォンと響くエンジン音が疲れた体に心地好い
「久々に流すか」
俺はアクセルをふかすと久々の夜の街へと走った
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1時間程走らせて一息つこうとコンビニに寄り、普段は飲まない缶コーヒーを手にとる
「ん?」
ふと見ると店内に俺のクラスの生徒である及川の姿があった
「おい」
『えっ?先生!』
「そこまで遅い時間じゃないが、こんな時間に何してんだ?その格好じゃまだ帰ってないんだろ」
制服姿の及川は鞄とミニサイズの牛乳を手にしていた
何の事はない状況だが、何故か違和感を感じる
「及川、お前確か自宅まだ先だろ?送ってやるよ」
『え・・・でも』
「今通ってきたけど、ここら辺昼間と違って暗いな。それを知って大事な生徒を1人で帰らせられるか」
半ば強制的に俺は及川をバイクの傍へ連れてくるとメットを手渡す
「それ被れよ」
『えっ?先生は?』
「気にするな」
準備よくメットなんて用意してるはずがない
それ以前に持ってない
バイクに乗り出して10年以上
仲間は乗せて走ったことはあるけれど
女を乗せた事は1度もない
なのに
何故だろう
状況が状況だからだろうか
自然にコイツを乗せようと思った