桐沢 洋
□桜
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とりわけ大きな桜の木にもたれ、俺は胸ポケットから煙草を出して火を灯す
こんな日だったな
麻奈が俺の前に現れたのは
元気な声に無邪気な笑顔
でもガチガチに緊張してるのまるわかりで
つい、からかってしまったアイツらの気持ちもわからん事もない
可愛い仔犬のような麻奈
男勝りの大食漢で、腕っぷしもそこらの奴より勇ましくて
でも涙もろくて、繊細で
無意識にこの腕に閉じ込めたくなるんだよなぁ…
麻奈がウチに来て4年
俺とバディを組んで2年
なくてはならない存在になった
2課にとっても…
俺にとっても…
「ボス!!麻奈ちゃんが出てきますよっ!」
「早よ前行って馬子にも衣装な写真撮りましょ!」
「野村さんのしまりのない顔も撮ってやりましょう!」
『おう!すぐ行く』
我が事のように喜んでいるアイツらに遅れを取らぬよう、俺も急いだ
一片の桜の花びらが最後の紫煙になぞって舞い上がる
【幸せになれよ】
春は…
出会いと別れの季節