Sexual case
□LAST FILE
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野村さんが退院して1ヶ月
私は野村さんと一緒に堀沢さんのお墓参りにきていた
野村さんは本当はもっと早くここに来たかったんだろうけれど警視として日々多忙な上、休んでいた時の決裁の山に囲まれて今日まで時間が取れなかった
花を手向け静かに手を合わせ、私達は堀沢警視長に改めて事件の報告をした
「堀沢さんらしいよ」
『え?』
「この場所が」
『?』
野村さんは立ち上がると後ろに見える大海原を見つめた
「堀沢さんの奥さんは病気で既に他界してるんだけど、夫婦揃って海が大好きだったんだよ」
懐かしさを含むような、愛しさを感じるような目でずっと海を見続ける野村さんがやけに寂しくみえる
そんな野村さんの手を私は取り、強く握った
―私がいます―
何故かそう言いたくて、でも言えなくて強く強く握りしめた
そして一瞬こちらに顔を向けると優しく微笑んでまた海へと視線を返す
「俺はさ、父親がいないんだよね。だからさ堀沢さんが何だか親父みたいでさ・・
この仕事始めて指導官として知り合って10年くらいかな・・最初の頃、俺がへこんだり色々あったら堀沢さん何も言わずに海を見せてくれたんだよね」
海を見つめている野村さんが微笑む
まるで目の前に堀沢警視長がいるように私には思えた