桐沢 洋
□夏の夜は恋を惑わす
3ページ/3ページ
「あ〜麻奈ちゃんどこ行ってたの?」
『ごめ〜ん!ちょっと迷っちゃって』
皆のところに戻ったがそこには桐沢さんと野村さんの姿がなかった
『あれ?桐沢さんと野村さんは?』
「アンタ探しに行ったんじゃない?」
「あ・・・戻ってきたみたいですよ?」
振り返ると2人が別々にこちらの方に戻ってくる
「及川戻ってきてたのか?ったくどこ行ってたんだ?」
(え?)
桐沢さんの言葉に一瞬戸惑う
桐沢さんはわざとらしい言い方を絶対にしない
でも鼻の頭を掻いている
付き合いだしてから気づいた桐沢さんの照れ隠しの癖・・・
「あ〜珍しい!野村さんからタバコの香りがする!」
「ああ、さっき桐沢からもらったんだよ。酒が入るとたまに吸いたくなるからね」
瑛希くんと話ながら野村さんが私の顔を見て微笑みながら横に座る
(え?)
そして野村さんの言う通り、桐沢さんと同じ香りが漂う
私がキスを交わしたのは桐沢さん?
それとも桐沢さんの香りのする野村さん?
私の顔を見ながら優しく微笑む2人の視線に私は惑う
夏の夜は恋を惑わす
私は一体
どちらとキスをした?
END