桐沢 洋
□夏の夜は恋を惑わす
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(神社の傍の大きな木・・ここだ!)
周りは提灯で明るいけれど幸いな事に人影はない
私は巾着から携帯を取り出し、桐沢さんに着いた事を知らせる
胸の高鳴りを抑えるかのように巾着をギュツと握りしめ、愛しい彼の到着を待つ
ザッッ
後ろから砂利を踏みしめる音が聞こえ、振り返る
その時フッと風が吹き提灯の明かりが消え、辺りが闇に包まれる
『キャッ!』
急な闇夜に驚く私の体は大きな腕で抱きしめられる
そして優しく唇が重ねられ、徐々に頬、首筋へとキスが下りてゆく
その度に自然と熱い吐息が洩れてしまう
『・・・アッ』
思わず零れた声を塞ぐように胸元へ下りた唇がまた私の唇に重なる
愛しい彼の愛しい顔を見たくて瞳を徐々に開くと、夜空に大輪の花火が打ち上がり眩しくて思わず目を閉じる
「お〜い!及川!」
「及川どこや!」
(!!!!!)
私を探す聞き慣れた声に思わず互いに驚く
近づいてくる声に互いに焦り始める
段々と近づく声
すると私のオデコに軽いキスをすると見つからないようにか去って行った
「お!いた!何してんのや!」
紅潮してる頬を気づかれないようにわざと暑いふりして顔を手で扇ぐ
『迷子になっちゃって』
「はぁ?まったくお前は」
『すみません』
探しにきてくれた花井さんと天王寺さんの後ろをついて行きながら、私は乱れた浴衣の衿元を整えた