* 愛への旅立ち *
□愛への旅立ち
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嵐渦巻く“彼女”の胸の内とは裏腹に―
窓の外に広がる空は
悲しい程にどこまでも青く澄み切っている
大きな窓から射し込む眩しい朝の光が
彼女の美しい金色の髪を、
さらにキラキラときらめかせていた…
“彼女”の名は『アリシア』
類い稀なる美貌の持ち主である
名門貴族の一人娘として生まれ、色とりどりの花々が咲き乱れる広大な庭に立つこの白く美しい屋敷で“蝶よ花よ”とそれはそれは大切に育てられた。
頭脳や絵画などの才能にも恵まれ…
と、ここ迄なら
彼女も自分を
『世界一の幸せ者』
とそう思えたのかもしれなかった
―が、
可哀想な事に
生来の“病弱な身体”が
彼女にそう思うことをさせてはくれなかった‥‥‥
一日の大半をベッドの上で過ごし、彼女の知る世界と言えばこの屋敷に庭、そして病院だけ…
そんな
『悲しみと只耐えるだけの日々』
とも言える彼女の人生においての“唯一の希望”―
それが“彼”
――“フィル”への愛 ――
なのであった・・・