* ふぞろい四重奏 *
□第一章 姫のお見合い
3ページ/7ページ
キースはベルガの後を追った。
案の定城の周りだけでなく町の中にも“ベルガ捜索隊”の人員は投入されていた。が、そこは慣れたものでふたりは町を抜けまんまと目的地へと辿り着いた―
「オマールッ」
細く開いたドアから少女の囁く声が聞こえた。
「お嬢っっ!?」
―そう、ここは城の厨房だった。
「「姫さまっっ!」」
オマールの声に反応したコックたちも口々に叫んだ。
「ッシーーッ、声が大きいっ」
ベルガがあわてて制止し、皆の顔色や目線を伺った後中に要注意人物がいないのを素早く確かめるとキースと共に飛び込んで急いでドアを閉めた。
調理台の上には色とりどりの豪華絢爛な料理が所狭しと並べられている…が、既に冷めきっていた―
―ほんのちょっぴり胸が痛んだ…が、直ぐに(悪いのはパパだわっ)と思い直した。
「ゴメンネみんな。でも大丈夫
、ちゃんと食べるから」
ベルガは一番若い見習いコックのクリオーネに四人分の料理を包ませると、『キースッ』と無言の内にそれを持つよう命じて用心深く厨房を後にした。
“四人分”と聞いてキースには今後の行き先が分かったが、それを王様に伝えるよう頼むか迷った。本来なら家臣として報せるべきだろう、だが結局ベルガを最優先する自分に(ヤレヤレ…)と心で溜息を吐いた―
隠れながらふたりが向かった先は城の厩舎だった。
数いる馬の中でも最も美しい毛並みと尾をもつ真っ白な馬、それがキースの愛馬“シェル”である。
「シェル、相変わらず間抜けな
顔ね」
開口一番これだ。
ふたり(?)はとても仲が悪かった。
「そんな事言ってるとまた振り
落とされるぞ」
「だからキライ」
(…ほんっとに手に余る…ハァ〜)
ベルガは自分の馬を欲しがったが、娘を溺愛する父シ・ロナガス王はケガを心配して決して与えなかった。
ベルガはしぶしぶ乗った。
シェルはしぶしぶ乗せた。
だが、一番渋い顔でいるのは言うまでもなくキースであった…
さて、三人(?)が向かったその先は―