* ふぞろい四重奏 *

□第四章“じい”VS“じい”
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『任務』を終えた家臣が戻ったのは、既に日が高くなった時分である―





「どうであった!?
 カイト様は?居られたかっ?」


気を揉んで何も手に付かずにいたアーキオ・プ・タ・リ・スクーが、平静を装いつつも食い気味に尋ねた。


「いえ… フ・ラメールに、カイト
 様は居られませんでした。
 立ち寄られた形跡も、私が調
 べた限りごさいませんでした」



「なんと・・・・・」


男が申し訳なさそうに答えるのに、

カイトがもし王の言うように『自らの意志で誰にも行き先を告げず家を出る』などという“無茶”をしたのなら、それは絶対『ベルガ絡みに因ってのこと』に違いない―

とそう考えていたアーキオ・プ・タ・リ・スクーは、大きな期待を裏切られさすがに落胆の色を隠せなかった…


が―



「あの、ですが…」

“想いもよらぬ情報”が、男によってもたらされた。


「今回の事に関係があるかどう
 かは分かりませんが、二つ程
“気になる事”がございました」

「気になる事? 何じゃ?」

「はっ!
 一つはベルガ様の事です。

 私の友人でフ・ラメールの家
 臣である者に聞いたところ、
 姫は酷い風邪を引いて居られ
 お医者さまとお世話する僅か
 な人間以外誰にも会えるよう
 な状態ではないとの事だった
 のですが、
 帰り掛けに町で立ち寄った店
 で“思わぬ噂話”を耳にいた
 しまして・・・」


「噂話、とな?」

「はい。それが…」


男は二人以外誰もいないと知りつつも声を落として言った。

「実は、ベルガ様が・・・」







―?!!


「なんとっ!!
 
 見合いの当日に居なくなられ、
 未だ戻って居られぬと申すか
 っっ?!」

「アワワワワッ!!
 どうか声をお控え下さいっ!
 あくまで噂話でございますっ。
 誰かに聞かれでもしたら…」


「いっ、い〜 いかんっ!ワシ
 としたことが…

 〜〜〜してっ、噂の出所は?
 分かっておるのか?」

「はっ!
 数人の客たちが『城に出入り
 の馴染みの町の商人がメイド
 達の噂話をたまたま立ち聞き
 した』と話しておりましたの
 で、その店に行き軽く探りを
 入れてみたのですが“そこは
 やはり城に出入りの大店の主”
 見ず知らずの私には警戒を解
 きません。
 ですが、どこか落ち着かない
 あの様子から見て
 メイド達の噂話が本当かどう
 かは別として、城中にそのよ
 うな噂が存在し主がそれを耳
 にしたことは確かと思われま
 す…
 また客たちは、事実を知る一
 部の家臣たちに“箝口令”が
 敷かれているらしいとも話し
 ておりました」


「うぅ〜〜〜む・・・・・
 して、いま一つ気になる事と
 は何じゃ?」

「はっ!それが、友が申します
 には
『昨日の朝よりキース様の姿が
 見当たらない』
 と家臣たちの間で話題になっ
 ているそうなのでごさいます」    
「ナニッッ?!あやつがっっ?」
「ですから声がっ!」

またもや男が小声で言うのに

「馬車じゃっ!
 馬車を用意せいっ!」

無視して命じ


男が慌てて階段を駆け降りて行くその後から

「コ・ウテイ・ペン・ギーめ・・」

終生のライバルの名を苦々しく呟き

老人とは思えぬ颯爽とした足取りで、アーキオ・プ・タ・リ・スクーは出口を目指した―
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